ポルシェ タイカン ベースモデルに試乗|4S以上との違いは何なのか?
公開日:2024.05.11
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ポルシェ タイカン ベースモデルとは?
今回は、ポルシェ タイカンのベースモデルに試乗する機会を得た。ポルシェ タイカンには、様々なグレードが存在するが、今まで私が経験したのはターボS、ターボ、GTS、4Sとほとんどのモデルであり、タイカン4以外は経験してきた。
今回は数日間ベースモデルを借りることができたので、他のグレードとの違いを中心にレポートしていきたいと思う。
まず結論から言うと、ベースモデルのタイカンは他のグレードとは印象がかなり違う。もちろん、同じタイカンなので基本的な乗り味やフィーリングは共通しているのだが、その濃さが全然違うのだ。
ターボSやターボは、タイカンの良いところを全てギュッと濃縮した車だ。
例えるなら、ターボSは牛乳で言うと特濃、ベースモデルは低脂肪乳のような印象だ。
ベースモデルならではの特徴
他のグレードと比べて、ベースモデルのタイカンにはいくつかの際立った特徴がある。順を追って詳しく見ていこう。
一つ目は、駆動方式の違いだ。ベースモデルのタイカンは後輪駆動のみを採用している。対して、4S以上のグレードは全て4WDシステムを備えている。
この違いは、走行性能に大きな影響を与える。ベースモデルに乗ると、4WDモデルと比べてフロント周りが軽く感じられる。四駆モデルなどではフロントタイヤでフロントを抑え込むような重量感があるが、ベースモデルにはそれがない。
また、雨の日に高速道路を走ると、その違いが顕著に現れる。特に金属製の継ぎ目の上を通過する際、後輪駆動のベースモデルでは少しでもアクセルを踏んでいるとリアタイヤがズレる感覚がある。一方、4WDモデルではそのような挙動は皆無だ。
二つ目の違いは、サスペンションにある。今回のベースモデルのタイカンは、通常のスチールスプリングのPASMサスペンションを採用している個体だ。
対して、4S以上のグレードは全てエアサスペンションを採用している。
この違いは、街乗りで特に顕著に感じられる。速度が50〜60km/h以下で、路面の凹凸が激しい場合、スチールスプリングのベースモデルの方がサスペンションの動きが大きい。
段差通過時の突き上げ感も、エアサスペンションの方が穏やかだ。
また、エアサスペンションの方が、細かい路面の凹凸に対する追従性が良い。スチールスプリングのベースモデルでは、細かいギャップをロードノイズとして拾いやすい。
とは言え、ベースモデルのサスペンションが突き上げ感が強いわけではない。他社の高性能セダンと比べれば、十分に上質な乗り心地だ。あくまで、エアサスペンション付きのタイカンが特別に優秀なだけで、ベースモデルが劣っているわけではないのだ。
また興味深いことに、ベースモデルのスチールサスペンションからエアサスペンションに乗り換えた時は、その違いを感じにくい。しかし、エアサスペンションのタイカンに乗り慣れた後でベースモデルに乗ると、その違いがはっきりと分かる。それだけ、タイカンのエアサスペンションは上質で、車格を何段階も上げてくれるオプションなのだ。
ただし、高速道路を飛ばすようなシーンでは、サスペンションの違いはあまり感じられない。どちらのサスペンションを採用していても、タイカンらしい抜群の直進安定性は健在だ。高速域で巡航していれば、車内からはサスペンションの違いを感じることは難しい。
ベースモデルならではの楽しみ方
ワインディングで走ると、ベースモデルのタイカンの性格がよく分かる。4S以上と比べると、よりドライバーの腕が問われるセッティングになっているのだ。
4S以上は電子制御の恩恵が大きく、ある程度ステアリングを切れば自動的に曲がってくれる。一方、ベースモデルはそこまで運転をアシストはしてくれない。自分である程度コースを読み、荷重移動を意識しながら運転する必要がある。
これは、昔のスポーツカーに良く似た楽しみ方だ。4S以上に乗るとまるでサイボーグのように速く走れるが、ベースモデルはアナログな操作性が売りだ。自分の腕でクルマを操る喜びが、存分に味わえる。どちらかというとエンジン車に近いフィーリングを持つタイカンと言ってよいだろう。
4S以上はカーブでのステアリングのレスポンス、正確性が抜群に良い。特にリアアクスルが付いていれば、その効果は絶大で、まるで992のカレラのように鋭く曲がっていく。
一方、ベースモデルはここまでの俊敏性はない。少しロールは大きめで、外側にしっかりと荷重をかけて曲がる感覚が強く、今までのエンジン車の感覚に近い。
とは言え、ベースモデルならではの楽しみ方はある。自分の腕でクルマを操り、うまく曲がれた時の喜びはひとしおだ。
パワーに関しても、正直なところ4S以上と比べるとベースモデルは見劣りする。特に追い越し加速や高速道路の合流など、ある程度の余裕を持ったパワーが欲しいシーンでは、4S以上の方が有利だ。
しかし、普通に使う分には十分すぎるパワーである。法定速度の範囲内であれば、ベースモデルでも十分に楽しむことができるだろう。
総評|ベースモデルのタイカンは誰のための1台なのか?
ベースモデルのタイカンは、昔のスポーツカーのような味わいを持つ1台だ。電子制御の恩恵は少なく、アナログな操作性を重視したセッティングになっている。
もしあなたがエンジン車の延長線上にあるフィーリングや、自分の腕でクルマを操る喜びを求めているのであれば、ベースモデルのタイカンはうってつけだろう。
ただし、快適性という点では4S以上、特にエアサスペンション付きのグレードに軍配が上がる。街乗りから高速走行まで、より上質でなめらかな乗り心地を求めるなら、そちらを選んだ方が良いかもしれない。
パワーに関しては、ベースモデルでも十分に速いし、楽しめる。しかし、4S以上のグレードの方が、加速時の余裕が段違いに大きい。走りを重視するなら、4S以上を選ぶと良いだろう。
私が、もしベースモデルのタイカンを買うなら、エアサスは付けると思う。エアサスで車高を下げた状態でワインディングを走れば、さらにリア駆動のアナログな操作性が堪能できるのではないかと思うからだ。
パワーやデジタルな運転感覚で選ぶなら4S以上も良いが、昔ながらのスポーツカーのようなピュアな走りを楽しみたいツウな方なら、ベースモデルで間違いない。
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