ポルシェGT部門のトップが語る、マニュアルトランスミッションの今後

マニュアルステッカー
ポルシェ・911

近年、新車市場からマニュアルトランスミッションが急速に姿を消しつつある。

しかし、ポルシェのGTモデルの責任者であるアンドレアス・プロイニンガー氏がmotor1に語ったところによると、電動化の波が押し寄せる中でも、この伝統的なギアボックスを守り抜く強い意志を持っているようだ。

今回の記事では、プロイニンガー氏の言葉を参考に、ポルシェがマニュアルトランスミッションに抱く熱意と、それがもたらす意外なメリットについて掘り下げていく。

マニュアル設定が残るポルシェのラインナップ

現在、多くの自動車メーカーはマニュアルトランスミッションを廃止したり縮小を行っており、日本で買えるマニュアル車となると数えるほどしかない。そんな中、ポルシェは718ボクスター、718ケイマンから911カレラT、そしてGT3に至るまで、ガソリンエンジンを搭載するスポーツカーのラインナップ全体でマニュアルを選ぶことができる。

しかし、今年後半に718が電動化される(予定)ことで、マニュアルモデルは911のみとなる見込みだ。

新型カレラT(992後期)のトランスミッション

プロイニンガー氏は、「個人的な見解として、マニュアルトランスミッションは非常に重要だ」と語っている。
彼は、PDK(ポルシェ・ドッペルクップルング)がより速いことは理解しつつも、ドライバーズカーとしてはマニュアルを好むという。サーキット走行時でさえ、自らギアを操作することに喜びを感じるそうだ。ポルシェというクルマの根幹には、ドライバーが主体的にクルマを操る喜びがある。プロイニンガー氏の言葉からは、その哲学が色濃く感じられる。

マニュアルトランスミッションの意外な利点

プロイニンガー氏がマニュアルトランスミッションにこだわる理由は、単に運転の楽しさだけではない。

彼は、マニュアルがより厳しくなる排出ガス規制に対応する上でも有効だと考えている。「マニュアルは軽量であり、燃費向上と排出ガス削減に貢献する。また、マニュアルギアボックスの内部抵抗はPDKよりも大幅に低いため、より多くのパワーがホイールに伝わる」と述べている。

つまり、現実世界では、マニュアル車の方がPDK車よりも燃料消費量が少なく、排出ガスも少ないというのだ。これは意外な事実だが、ポルシェのようなスポーツカーブランドにとって、環境性能と運転の楽しさを両立させる上で、マニュアルトランスミッションが重要な役割を果たすことを示唆している。

実際に、2022年の911 GT3の販売台数では、各国によって差はあるものの、国にってはマニュアルモデルが全体の50%近くを占めたそうだ。
これは、ポルシェの顧客の間で、マニュアルトランスミッションへの根強い人気があることを示している。多くの自動車メーカーが電動化や自動運転技術に力を入れる中、ポルシェはマニュアルトランスミッションという、ある意味で時代に逆行する技術を大切にしている。

そこには、単なる懐古趣味ではなく、クルマを操る本質的な喜びを追求する姿勢があるのだろう。

電動化時代におけるマニュアルの行方

現在のポルシェのスポーツカーは、マニュアルトランスミッションが廃止される心配はない。

しかし、ポルシェは電動化が進む中で、電気自動車(EV)にマニュアルトランスミッションをシミュレートする機能を開発することは否定している。BMWやフォードがマニュアルトランスミッションを搭載したスポーツカーを作り続けている一方で、メルセデスAMG、フェラーリ、ランボルギーニはすでにマニュアルモデルを廃止している。ポルシェがマニュアルにこだわり続ける姿勢は、他のメーカーとは一線を画していると言えるだろう。

ポルシェ・ボクスター

電動化の波は、自動車業界全体を大きく変えようとしている。

しかし、ポルシェは、その中でも「運転する歓び」という普遍的な価値を守ろうとしているのだ。マニュアルトランスミッションは、その象徴的な存在と言えるだろう。ポルシェ乗りにとって、マニュアルトランスミッションは単なるギアボックスではなく、クルマとの対話、そして運転そのものを楽しむための大切な要素なのだ。プロイニンガー氏の言葉からは、ポルシェがこれからもその哲学を貫き、マニュアルトランスミッションを守り続けるであろうことが伺える。ポルシェオーナーはもちろん、クルマを愛するすべての人にとって、このニュースは希望の光となるだろう。

ポルシェが守り続けるもの

今回の記事では、ポルシェGT部門のトップ、アンドレアス・プロイニンガー氏の言葉を基に、ポルシェがマニュアルトランスミッションに寄せる熱意と、その意外なメリットについて解説した。

電動化が加速する現代において、ポルシェがマニュアルトランスミッションを重視する姿勢は、単なる懐古趣味ではなく、クルマを操る喜びという普遍的な価値を追求する姿勢の表れだと言えるだろう。ポルシェ乗りにとって、マニュアルトランスミッションは単なる部品ではなく、クルマとの一体感や運転の楽しさを象徴するものだ。ポルシェが今後も、その哲学を貫き、マニュアルトランスミッションを守り続けることを期待したい。

911GT3

ポルシェというクルマは、単なる移動手段ではなく、ドライバーの情熱を掻き立てる存在だ。
その根底には、マニュアルトランスミッションのような、人間が主体的にクルマを操る喜びがある。私も981ボクスターGTSのマニュアル車はわが家のポルシェの中でも一番のお気に入りだ。

ポルシェが電動化を進める中でも、この価値観は決して失われることはないのではないかと思う。

Hiro

Minaの夫です。 ファッションやステータスシンボルのためにクルマは乗りません。運転して楽しく、工業製品として優れ、作り手の意思が感じられるようなクルマを好...

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