ポルシェ 911 GT3(991.2)納車日当日のファーストインプレッション
公開日:2019.06.05
GT3ツーリング初走行
先日、GT3ツーリングが納車されたが、納車日の初乗りで約200kmほど走行した。そのときに夫が感じたファーストインプレッションについて、今日はご紹介したいと思う。ちなみに、夫が購入したGT3ツーリングのオプション、仕様については下記の記事にまとめているので宜しければ御覧ください。
Born in Flacht
初めてボクスターを買った時「いつかはGT3に乗りたいなぁ」と思い、その後も、たまにディーラーで展示されているGT3を見ては「ええなぁ」と思っていたけれど、この度やっと手に入れることができた。
ポルシェのモータースポーツの開発拠点のあるドイツはフラハトで開発され、ツッフェンハウゼン工場で生産されたGT3がやっと手元にやってきた。直線距離にして9300キロ超の長旅、おつかれさま。
この辺のクラスになると、リセールも悪くないので、あまり乗らずに次から次へと買い替えるケースも多いようだけど、僕は「ポルシェは乗ってナンボ。ガレージに飾るのはスーパーカーに任せておけばいい。」と思っているので、遠慮なくガシガシ乗るつもりだ。
故・徳大寺有恒氏によると、911を理解しようとすれば5年は乗らないといけないらしい。
どんなことがあっても、もう飽きたと思っても、最低五年はこの車に乗るんだな。
それぐらい乗らないと、911のことなんてわかりっこないからさ。
何年乗るか分からないが、買い物、コンビニ、通勤、子供の送迎、そして、もちろんツーリングと、遠慮なく普段使いしてやろうと思っている。
妻のTwitterのフォロワーさんのどなたかが言われていたが、TP(ツーリングパッケージ)ならぬ、『通勤パッケージ』(笑)のつもりで私も使うつもりだ。それが、この個体の製造に関わってくれたポルシェの開発者や工員の方々への敬意でもあると思うからだ。
納車初日
エンジン・トランスミッション
GT3のエンジンはメカニカルなクランキング音の後、威勢良く目覚める。各気筒で燃焼が起こった後の排ガスがマフラーから出る際に、バックファイア的な音を僅かに残し、速やかにアイドリングに移る。
GT3のエンジン始動音は、音量的には大きい方だ。ボクスターGTSも同じくらい大きいが、音の質が違う。GT3の方がメカニカルな音の割合が大きく、音が重い。
クラッチはこのパワーにしてはかなり軽めだ。シフトレバーは他のGT系ポルシェと同じショートストロークタイプで、ボクスターGTSのものより少し短い。このシフトを使って、GT3のために開発された『GTスポーツマニュアルトランスミッション』を操ることになるのだ。
シフトストロークは極めて短い。ニュートラルへ戻るバネの力は強く、コクコクと気持ちよく入る。これもボクスターのものより数段上のフィーリングだ。クラッチの繋がる領域も分かりやすく、ボクスターのように二段階で繋がるような感覚は無い。(表現が難しい。ボクスターは最初、この感覚が難しくて慣れるのに苦労した。)
走り出すと、エンジン音は思ったより静かだ。スポーツエグゾーストをオンにすると、少し低音が増すが、街中をタウンスピードで走るくらいならうるさいということは無い。後で調べてみると、スポーツエグゾーストのフラップは3800回転付近で開くことが分かった。
ちなみに、アイドリング時にオンにすると、フラップは開き、音が大きくなるが、ギアを繋ぎ走り出すと一旦閉まり、3800回転付近で再度開く。つまり、タウンスピードで走っている分には音は変わらない。現に2000回転付近でボタンを操作しても音の変化を感じるのは難しい。
これは騒音規制に対応するためのものと思われ、車検証にも、
平成28年騒音規制車、騒音カテゴリ M1C1A 近接排気騒音値 95db 測定回転数 3800rpm (旧基準適用時測定回転数 4000rpm)
とある。ちなみに海外仕様でもネットのフォーラムを見る限り、制御される回転数は同じのようだ。
とはいえ、軽量化のために諸々の遮音材や部材が取り除かれているGT3だけあり、可動部が発生する音はしっかり聞こえる。ギアの音、エンジン音、そして何か分からないがガチャガチャと後ろから聞こえ、特に油温が上がるまでは色々な音がする。
2000-3000回転あたりで走る分には、ボクスターGTSの方が、一般の人にでもハッキリと分かりやすい快音をエグゾーストから出してくれるが、GT3はそうでもない。どちらかといえば、メカニカル系のノイズが大きい。
言葉で表現するのは難しいが、ボクスターは比較的低い速度域でも『クォーン、バババ(バックファイア音)』を出し、分かりやすい演出がある。おそらくスーパーカー的な音が好きな方はボクスターGTSの方が好みだと思う。
一方のGT3はというと、低回転域では『グオーン』という感じのやや濁った音で、フラップが開くと、途端に『プォーン!』と大音量になる。そして、回転を上げるに従いその音量は上がっていく。ちなみに、バックファイア音の演出はなく、あくまでパフォーマンス重視のチューニングのようだ。
次にエンジンのフィーリングについてだ。
最初のフィーリングは、街中では何となく『非常に固く組み上げられたエンジン』という感じでギア音も含め「本当に9000回転までスムーズに回るのか?」と疑問を抱くような感じだった。もちろん、タコメーターの針の動きは早く、高性能エンジンであることは分かるのだが、納車されてすぐの状態では、とにかく固く、重い感じがした。
慣らし中なので、あまり踏まないようにしていたが、それでも、一般道だと持て余す加速感だ。高速道路のトンネルなどでは、かなり音が響き、全く煽ってないのに、前のクルマ達が蜘蛛の子を散らすかのように走行車線に避けてくれる。何だか申し訳ない気になる。
手元のポルシェのプレス資料によると、このエンジンは「911 GT3カップのエンジンがほとんど仕様変更されることなく使用されています。」とあり、『レースエンジン』と明記されている。確かにそれだけのことはある。しかも、低速域やタウンスピードでも全く使い勝手を犠牲にしていない、いや、むしろ、非常に扱いやすいのだ。他メーカーの高回転エンジンを色々と少なからず経験しているが、やはりポルシェはバランスが良いとあらためて感じる。
乗り心地・サスペンション
運転した感じは「とても乗り心地が良い」というのが第一印象だ。ボクスターと比べても、さらにフラットで、特に細かい振動をしっかりと吸収してくれる。硬いことは硬いのだが、異様にフリクションの少ないサスペンションといった感じだ。
高速道路などの舗装の綺麗な道では、滑るような感覚で、とてつもなくスムーズ。これは私が今まで経験したスポーツカーの中でも一位二位を争うレベルだと思う。
一方、比較的大きなバンプや、左右非対称なうねりや凹凸があるような道では、大きく左右に揺すられる感はある。これはサスのストロークが短いので仕方ない点ではあると思うが、それでも衝撃自体は上手く丸められているので、腰痛持ちの私でも腰が痛くなるなんてことは無い。
このサスペンションに関して思うのは、乗り心地の良さを念頭に開発されたというよりも、タイヤがいかに路面を捉えて離さないようにするか、を重視しているように思う。サーキット走行やレースではタイヤの接地性というのは非常に大事で、常にタイヤが路面に正しく接地している方がトラクションもかかり、コーナーも踏ん張ることができるため、タイムの向上につながるのだ。
GT3の接地感はとても強く感じる。ゆえに、多少の路面の凹凸にも、サスがしなやかにタイヤを路面に押し付けるので、結果として乗り心地が良いと感じるのだろう。
ちなみにPASM(足回りの設定)を『スポーツ』にすると、多少、固くはなるが、それでも舗装状態の良い路面ではほとんど分からない。違いが分かるのは、やや路面が荒れ気味のワインディングなどだ。こういう状況では『スポーツ』はオススメしない。確かにロールは減るが、ややハネ気味になるので、タイヤと路面の接地性が薄れ、結果、気持ちよく走れないのだ。
以前、ケイマンGT4の開発者が語られていた記事で読んだことがあるが、『ノーマル』モードはニュルブルクリンク ノルドシュライフェを走るのに最適なセッテイングです、とあった。確かにニュルブルクリンクの北コースは路面のアンジュレーションもキツく、路面も荒れている箇所もある。
また、GT3の取説にも『スポーツモードは平坦なレース サーキットなどに適しています』とある。それゆえ、もし、一般道のワインディングや峠を走るなら、よほどフラットな路面で無い限り、ノーマルで走る方が良いようだ。
最後に、シートについて。
今回はオプションの『アダプティブスポーツシートプラス(電動18way)』を選択している。ボクスターの『スポーツシートプラス(2段階、電動)』よりも1ランク上のものになる。
シートの形状としてはほぼ同じだが、ボクスターGTSのフルレザーに対して、GT3ツーリングパッケージの場合は、座面とバックレストがファブリックになる。
かなりコシのある座面で、座面そのものの感じは、以前、知り合いのGT3で座らせてもらった『軽量フルバケットシート』によく似ている。適度な柔らかさ中にも芯があり、非常に心地よく、電動で調整できる範囲も多い。ちなみに、調整範囲は以下。
- バックレストの角度
- 座面の前後の高さ
- 座面の長さ
- 座面のサイドサポートの幅
- バックレストのサイドサポートの幅
- ランバーサポート(上下位置と厚み)
腰痛持ちだが、調整範囲が多いのでこのシートはかなり腰が楽だ。特に、座面とバックレストのサイドサポートの幅を調整すると、運転中に身体がしっかりとホールドされるので、特に私の場合は腰への負担が少なくなることが分かった。
ちなみに、わが家にあるポルシェのシートの腰痛への影響を並べてみると以下の通り。
(個人差によるところが大きいのでご参考まで)
GT3ツーリング < ボクスターGTS < パナメーラターボ < 911(964)
964のシートが最も腰への負担が大きく、なかなかベストなポジションが未だに見つからない。今回のGT3のシートは本当に負担が少なく、500km/日クラスのロングツーリングでも十分に快適そうだ。
ここまでが私が初日に感じたファーストインプレッションになるが、距離を伸ばすにしたがい、新たに分かることも出てくると思うので、それは追々レポートさせていただく予定だ。
慣らしツーリングへ
いかがだったでしょうか。この納車日の翌日から、夫は四国へ慣らしツーリングに出かけたが、その様子はまた追って記事で紹介したいと思う。ちなみに、GT3ツーリング納車日の様子(ドキュメンタリー)はこちらの記事にまとめています。
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コメント ( 4 )
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ついにこの日がやってきましたね。一体どんなモンスターなのかが楽しみです。旦那様には別途お祝いの言葉を送らせていただきました。芦有での再会が今から楽しみです。
かのうさん
いつも有難うございます!はい、ついにGT3が納車されました!
音もパワーも性能もやっぱりすごいです
また芦有でおあいできること、楽しみにしております!
遅ればせながら
GT3納車おめでとうございます。( ^ω^ )
とても丁寧なインプレッション、
楽しく拝読させて頂きました。
間も無く、もっともっととせがんで来ますので
楽しみですね( ^ω^ )
私が他の車を持っても
GT3を乗り続けている理由が
このインプレッションからも
理解出来ました。( ^ω^ )
Caraさん
GT3納車、有難うございます!
やはりGT3は全然違うみたいですねー夫が大興奮していました。
>間も無く、もっともっととせがんで来ますので
>楽しみですね( ^ω^ )
車がもっともっととせがんで来る感覚って、なかなか他の車では味わえないのだろうなぁと思っております。
きっとCaraさんの時代のGT3だったらもっと自分の手で扱う部分が多くて面白いのだろうなぁーと…!
ぜひ、また芦有でご一緒できたら嬉しいです。
引き続きよろしくお願いいたします!