しかし、GT3の安定感はすごい。あまりに安定して平和なので「まだ行けるかな？」と、アクセルを途中で踏み増すと、タイヤのグリップが破綻しそうになり、挙動がわずかに乱れ、PSMが制御を入れてくる。「なるほど、PSMがONの状態で、このくらいで制御が入るんだな」と限界値を探りながらダンロップコーナーからデグナーに向かう。

立体交差の下をくぐり、2速でのフル加速。9000回転、至高のフラットシックスNAサウンドを聞きながら、ヘアピンへ。

ヘアピンでは思いの外、インに簡単に付けるのだ。ボクスターで走ると、もっと苦労したというか、少しオーバースピードだと外に膨らんでしまうが、そんな時もGT3はハンドルを切れば、グッと切り込むように入っていってくれる。

ボクスターと比べると、アンダーステア傾向がとても少なく、どちらかというとオーバーステア傾向に感じる。

200Rをアクセルを踏みつけて走るのは結構怖いものだが、思い切って踏み切って走ってみる。途中、怖さというよりもGT3の値段が頭をチラつき、無理はせず、スプーンへ。スプーンの後半、バックストレートへ続く出口付近でもとてもGT3は安定している。ここは、少しコース取りを失敗したり、オーバースピードだと挙動が乱れやすい箇所だが、GT3はかなり懐が深く、少々のミスも何事も無かったかのように曲がっていってくれる。

バックストレートは当然ながら全開で走り、難しい130Rだ。私の腕だとボクスターでおおよそ、140km/h〜160km/hくらいで通過してた記憶があるが、GT3はそれよりも全然余裕だ。170〜180km/h前後でもそれほど怖さはない。たぶん、まだいける。ただ、怖さよりも、GT3の値段が頭にチラつくのを抑えるほうが難しい（笑）

130Rなんかを走ると「このGT3にリアウィングが付いていればなぁ」と正直思う。いや、むしろ「これがGT3RSだったらなぁ」と思う。ウイング無しのGT3ツーリングパッケージでも全く安定しているし、不満では無いのだが、もっと上の性能を体験してみたくなる。

もしサーキットメインで考えるなら、やはりGT3RSなんだろうな、と思う。

シケイン手前でのブレーキング、とにかくブレーキの調整がしやすい。もちろん、ポルシェの普通のブレーキでも、とても調整しやすいのだがPCCBはとにかく懐が深く、「ちょっと減速しすぎたな」とか「ちょっと減速が足りないな」と思った時に踏力を軽く調整するだけで、頭の中で狙ったポイントとスピードに車体をスッと合わせてくれる。

他の高性能スーパーカーのブレーキなども素晴らしくよく効き、制動力だけでいうと同じかそれ以上のものもあるとは思うが、このコントロール性の高さ、人間の感覚に合った感じが『ポルシェのブレーキ』なんだなと思う。

サーキットでのGT3の総評

今回、GT3をサーキットに持ち込んだのは初めてだったのだが、一番に思ったのは「全然、乗りこなせていない」ということだ。一般道ではかなり慣れてきて、GT3を思いのまま扱える気分になっていたが、それは全くの幻想だった。

GT3は一般道では全く見せない隠れた表情や能力を持っており、それが解放された時、ドライバーの腕の方が明らかに格下だということを思い知らされた。

GT3はとてつもなく高い運動性能を持っているため、誰が乗ってもそれなりに速く走れるだろう。ライン取りを失敗しても、ブレーキングを失敗しても、その性能でかなりの部分をリカバリーしてくれる。一方でその運動性能をもっと積極的に使いこなし、タイムを削ることに使うことができれば、GT3はさらに上の世界を見せてくれるように思う。

私の場合は、まだその運動性能をプラスの方向に引き出せておらず、私のミスや腕の無さのカバーのためにしか使えていないという印象を受けた。なので、まだまだ「GT3を乗りこなせていない」と感じたのだ。

今回は走行台数も多く、クラスも混走。イエローフラッグや赤旗中断もあり、クリアラップを1周も取れなかったので、まともなタイム計測は出来ていない。

現在、ポルシェの公式スマホアプリである「Porsche Track Precision」で取得した走行中の車両データと映像で、どこが悪く、どこが良かったのかを分析しながら、自宅のグランツーリスモSPORTで練習中の今日この頃だ。また、近いうちにサーキットで走ってみたい。