これが史上最強の911!ポルシェ911 GT2RSに試乗|猛獣を飼いならすことはできるのか?

911GT2RS
レビュー・試乗記

最強の911 GT2RS ヴァイザッハパッケージ

今までGT3のレビュー記事は数多く書いてきたが、GT2RSの試乗記事は今回が初めてだ。

GT3のもう一つ上のカテゴリーに属するGT2RSとは、どんなクルマなのかについてまずは解説していきたい。

911GT2RSのエンブレム

RS系モデル伝統のステッカーであり、通常モデルのようなエンブレムではない。

ポルシェのGT系には5つの種類がある。

有名なGT3、そしてケイマンに設定されるGT4、カイエンに設定されるGT、現在はもう生産されていないが伝説のレーシングカー(公道仕様車あり)のGT1、そして、そのGT1とGT3の間を埋めるのがGT2になる。

現在の911の中での最強モデルであり、限定生産ではないが、とても生産台数も少ない車種の一つだ。

特徴としては、911ターボやターボSに搭載される3.8Lのターボエンジンをさらにチューニングし、その上で、911ターボ系にある四輪駆動システムを取り外し、後輪駆動(RR)にした911がGT2になる。また言い換えると、GT3に911ターボのエンジンを搭載したクルマと言ってもよいだろう。

911GT2RSのエンジンフード

911GT2RSのヴァイザッハパッケージ

チタン製のロールケージ

最高出力はなんと700ps!当時のターボSが580psなので、120ps以上のアップだ。これにより0-100km/hまでを2.8秒で加速。8.3秒で200km/h、そして340km/hの最高速度まで加速する。

もちろん、これらのカタログ数値はポルシェの常で、控え目な値であり、どんな状況でも確実に出せる値であることを考慮すると末恐ろしいパフォーマンスである。

そしてニュルブルクリンク北コースのラップタイムは驚異の7分切り。6分47秒3という、現時点の無改造の市販車の中では歴代1位のタイムだ。これは少し前なら完全なレーシングカーでしか出せなかったタイムなので、いかに速いかお分かり頂けるだろう。

911GT2RSのマグネシウムホイール

希少で超高価なマグネシウムホイール

911GT2RSのヴァイザッハパッケージ

このロゴがヴァイザッハパッケージの証

ボンネットやフロントフェンダーなど多岐にわたるカーボンパーツ、そしてこの個体はヴァイザッハ パッケージ(ヴァイザッハとはポルシェの開発センターがある街の名前)なので、標準のクラブスポーツパッケージよりも30kgも軽量化されている。

主だった軽量化ポイントとしては、ルーフと前後のスタビライザー、チタン製のボルト固定式リアロールケージなどが挙げられる。さらに、この個体はオプションのマグネシウムホイールまでも装備されており、11kgも軽量化されている。

なお、このマグネシウムホイールは初期ロットのオーダーでしか発注できなかったそうで、後期ロットでは選べなかったそうだ。なので、マグネシウムホイールを装着したGT2RSはとても希少でもある。

エンジンのフィーリング

さて、前置きは以上にして、試乗レポートをしていこうと思う。

インテリアのデザインは991後期の他の911とそれほど変わらず、GT3RSやGT3とほぼ同じだ。キーを差し込み、エンジンをかける。

とてつもない爆音で、GT2RSは目覚める。これはちょっと驚くレベルだ。

同じ991後期のGT3よりも明らかに音量は大きく、特に外で聴く始動音はここ数年のポルシェの中でもダントツに大きい方である。

911GT2RSのメーターパネル

スピードメーターは400km/hまで刻まれる

GT3と同じく、クリープ現象の無いAT(PDK)なので、少しアクセルを煽りながら発進する。

タイヤの転がり感、接地感は991後期のGT3とほぼ同じような感じだ。ただ、マグネシウムホイールにPCCBなので、ステアリングや車体全体の軽やかさを感じる。低速域でフラットな路面を走っている範囲では、とても乗り心地は良い。

もちろん、やや揺れは大きいのでデートカーやシティユースにはオススメしないが、生粋のスポーツカーにしては乗り心地は良い部類だ。

この辺りは991後期のGT3にとても良く似ている。

ターボエンジンとはいえ、3.8Lもあるので、ターボがかからなくても十分な低速トルクだ。2000rpm台でも高性能ターボ車にありがちな不満はなく、911ターボ系と同じような低速での扱いやすさは健在。そして3000rpmを超えた辺りから、湧き出るようなトルクの波を感じる。

とはいえ、ここではまだ序の口。トルクの波を遠くに感じるような感覚で、GT2RSの本領は全く発揮されていない。

911GT2RS

もっとドッカンターボ系かと思っていたが、そこまでではない。回転が上がるとどこかで急激にトルクが盛り上がるというよりも、回転に比例するトルクの盛り上がりのカーブがすごい。

しかもエンジンは凄まじく軽やかに回る。軽やかにNAエンジンのように吹け上がるのにトルクが厚い。

まさにGT3にターボを付けたような感覚と表現するのが適切だろう。

これだけの大パワーであれば一般道のワインディングなどでは全く回せないのか、と想像していたが、そうでもない。意外にもこれだけ高トルクのクルマなのにギア比は低め。特に2速が低く、日本のワインディングでもそこそこ回せる。

それにレッドゾーンが7200rpmなので、GT3の9000rpmに比べると、現実的に回しやすいのだ。ちなみにオーナーさんに聞くと、回転はスムーズなのにレッドゾーンが低いのですぐにレブに当たってしまうとのこと。

ただし、そうは言っても最強の911、GT2RSである。何とか踏めるのは2速まで。3速で踏もうとすると、正直、恐怖を感じる。あまりの加速力と後輪駆動、そして頭をよぎる車両価格による精神的なプレッシャーが相まって、ベタッとアクセルペダルを踏むなど相当な広いスペースでないと無理だ。

アクセルを踏み込むたびにフロントの荷重が抜け、ウイリー走行とは言わないが、それに近い感覚を感じる。325/30ZR21の極太のダンロップ Sport Maxx Race 2のグリップさえ打ち負かし、その加速力で後輪が小刻みに左右にブレる感じがする。

ところどころ、隠れている獰猛さの一端を感じる瞬間だ。

「速い!」

ちょっとレベルの違う速さで、この中間加速力はタイカンターボの『フリーホールか?』と思うような加速力には負けるものの、マクラーレンの720Sや650Sと同等レベルではないだろうか。

911GT2RSのリアウイング

911GT2RSのヴァイザッハパッケージ

カーボンボンネット

ハンドリング

コーナーでのマナーやフィーリングについては、私の記憶が正しければ991後期のGT3にとてもよく似ている。もちろん、GT2RSの方が軽量なクルマという感じはするが、ステアリングを切った時のゲインの立ち上がり方から、コーナリング姿勢、ステアリングへの路面からのフィードバックなど、同じように感じた。

切ったら切った分だけ曲がり、コーナー途中から食い付くようにタイヤが路面をとらえて離さない。

そして、後輪へのトルクのかけ方ひとつで姿勢をコントロールして、操縦するセオリーはまさに伝統の『911』そのものである。

なお、最新の992型のGT3の試乗の記憶も新しいので、それとステアリングフィールを比較すると、やはりフロントの接地感、ステアリングレスポンスの良さ、コントロール性は992に軍配が上がる。なので、もし将来、992型のGT2RSが出ることがあれば、想像しただけでも末恐ろしい。

エンジン音とドライバビリティ

カーブをいくつも抜け、クルマにも多少慣れてきたので、少し落ち着いて音やフィーリングを確かめる。

GT2RSは「グオーーン!」という猛獣が吠えるかのよう音が特徴で、かなり音量は大きい。それに低回転域でも、991のGT3のように極端に静かなことはなく、回転数と音量が適度に比例しているので低回転から運転していて楽しい。

また、アクセルオフでのバブリング音も「ボボッ!」というか「ドドッ!」という短い感じで頻繁にする。しかし、これは981や991の完全に演出目的のバブリング音とは違う。

大量の燃料をエンジンに送り込む中で、仕方なく排出された一部の混合気がマフラーの熱で燃焼する、本来のバブリング音のような感じで、とても自然な感じで好感が持てるものであった。

また、低速域から3速固定でアクセルをグッと開けてみる。これはターボ車のターボラグを確認するために私がよくやる方法だが、GT2RSの場合、それなりに排気量があるのでターボがかからなくてもそれなりに加速する。

ターボラグは多少あるが、それは992のカレラSのエンジンよりは少なく、992のカレラのエンジン並の少なさに近い。

総評

GT2RSは意外にも、日常のドライバビリティは意外にも高そうである。少なくとも私の感覚では、GT3と比べると乗り心地などは大差は無いかもしれないが、日常域でのエンジンの扱いやすさ、トルク特性などから日常使いはし易い方なのではないかと思う。

911GT2RS

とはいえ、あの大きなリアウイングに多数のカーボン素材を身にまとったボディのことを考えると、なかなか気軽に毎日乗ることはできないだろう。

やはり、このクルマはやはりサーキットや空いている近所の山道、短時間のショートツーリングなどの用途で乗るべきクルマであると思う。

史上最強の911は、パフォーマンスもさることながら、そのドライバビリティにおいても考慮されている点が垣間見えるクルマだった。しかし、この獰猛な獣が本気で牙を向いた時、700psのRRをコントロール下に置くには、それなりの高いスキルが求められる。

これを乗りこなしてこそ、『真のポルシェ乗り』と言えるのではないだろうか。そう思えたクルマであった。

Hiro

Minaの夫です。 ファッションやステータスシンボルのためにクルマは乗りません。運転して楽しく、工業製品として優れ、作り手の意思が感じられるようなクルマを好...

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