新型GLS400d|Sクラスを所有していた経験からみるとどう感じる?
公開日:2020.07.23
先日、メルセデス・ベンツGLSを試乗した感想を書いたが、今回は夫の感想をお届けしたいと思う。
コンテンツ
メルセデス・ベンツGLS試乗
先日、妻と一緒にGLSの試乗に行ったので、その時の感想を書いてみたい。
まず、最初に私のメルセデス遍歴は、R171のSLK350に始まり、R129のSL500、C217のAMG S63クーペだ。このメーカーに対する私の印象としては、とにかく『実直』なクルマ作りをするということ。
決して、スポーティー過ぎず、必要以上にエンジンやサスペンションは主張しない、あくまでも乗員を快適・安心・安全に運ぶことに徹底的にこだわっており、かといって単調で退屈では無い乗り味に魅力があるメーカーだと思っている。
今回、家族で乗れる快適SUVを検討するにあたり、走りよりも快適性重視、特に後席や機能・装備重視で検討していたところ、メルセデスのGLS、BMWのX7、ポルシェのカイエンの3台が候補に上がっている。この中でカイエンだけは、一回りサイズが小さな部類に入るが、その走りと乗り心地の良さに魅力を感じ、候補から外さずに候補の中に入れている。
今回、GLSを試乗するにあたり、特に神経を集中して意識していたのは以下のポイントだ。
- ディーゼルエンジンのフィーリング
- 乗り心地・フィーリング
- 室内の質感や装備
直列6気筒 2.9リッター直6ディーゼルターボ エンジン
ドライバーズシートに腰掛け、エンジンをかけてもかなり室内は静か。振動などは皆無に近く、とにかく快適だ。
ハンドルの右側にあるコラムシフト型のシフトレバーを操作し、ドライブに入れ、アクセルを軽く踏み出すと、2.5トンを超える巨体はいとも簡単にスルスルと動き出す。
広大な室内や大きな外観を見ているので、頭の中ではもっとゆっくりと動き始めるイメージを持ってしまうが、アクセルを踏んだ瞬間に、いい意味で、それは裏切られるのだ。
ストップ・アンド・ゴーの多い街中でも、スッと加速し、スッと止まる。700Nmのトルクはとても頼もしく、街中でのパワー不足などは一切感じない。ブレーキも秀逸な部類で、決してその重さに負けておらず、乗員に余計な意識を要求することなくコントロールできるところはメルセデスらしい。
エンジンはとても静かで、滑らか。少し踏み込んだ際のスムーズな回転フィーリングはディーゼルエンジンとは思えないというのも納得だ。一方で、アイドリング時にステアリングから伝わるチリチリという極小の微振動や微かな音は、やはりディーゼルであることは分かってしまう。
まぁ、私の場合、ガソリンエンジンばかりに乗っているので、余計に感じやすいのだとは思うが、ディーゼルエンジンに慣れた人からすると、かなりディーゼル色が薄くなったエンジンに感じるだろう。
走行フィーリング
極太のトルクと、ステアリングの軽さなどが相まって、見かけとは裏腹に、とても軽やかなフィーリングのクルマに仕上がっていると思う。運転のしやすさ、楽さという点で見れば、100点満点のクルマだと思う。
一方で、私が試乗する前に想像していたのは、GLSと『S』の称号が付いてるからには、S63クーペを所有していた時に感じていた、Sクラスのあの厚みのあるしっとりとした乗り心地だ。
その視点から言うと、今回のGLSはもっと淡白な乗り味と言える。少なくとも私が知っているあのSクラスの重厚さ、しっとり感というのは、あまり感じない。具体的には路面のザラつき感、転がり感はSクラスのレベルには少し足りないと私には感じた。
無論、ボディ形状が大きく違うので、無理もないとは思うが、それでも『S』を名乗るならもう少し『運転しやすさ』よりも『上質さ』に重きを置いてほしかったと思う。
乗り心地自体は、運転席ではとてもフラットで快適であり、船のようにユサユサと揺さぶられることも少なく、高い重心を上手くコントロールしていると思った。運転席の快適性も文句なく良いと言えるだろう。
一方で、2列目の後部座席に移り、乗り心地を確かめてみる。ここで感じるのは、やはりGLSといえど、多くのSUV特有の後席の乗り心地の悪さは隠しきれない。もちろん、絶対評価では決して悪くないのだが、運転席と後部座席の乗り心地を相対的に評価すると、どうしても、後部座席は上下動が大きめで、ユサユサとする感じは否めない。
これが7人乗車や、多めに荷物を積んだ状態だと、もっと落ち着くのかもしれないが、3人乗車で乗った感じの後部座席の乗り心地は、やはりセダンには敵わないというのが結論だ。とはいえ、先代のGLSよりは、かなり改善しているのは間違いなく、相当に良くはなっていることは付け加えておく。
なお、現時点で日本仕様のGLS400dには、話題の48Vの電子制御サスペンションである『E-ACTIVE BODY CONTROL』が装備されていないので、やや分が悪い。なので、これが装備されたモデルか、標準装備となるGLS580での乗り心地を試してみたいものである。
室内の質感、装備
室内のデザインなどは、好みによるところが大きいと思うが、私はとても好きな内装だ。特に、エアコン吹出口が既存のメルセデスに多い大きな花形の円形から、スクエアでシンプルな形になっているので、こちらの方が好きだ。
内装の質感はやはり価格なりに高く、決して安っぽさは感じない。最近のメルセデスのシートはスポーツ系になると、とても薄くて固いシートが多いが、このGLSのものは肉厚で快適。後部座席にも手抜き感はなく、十分な厚みがある。
後部座席はリクライニング&スライドが可能で、かなり広い。なので、男性でも十分に足を伸ばすことができるが、その姿勢をした時には、もう少し座面の長さがあればなお良いと感じた。
装備系は、輸入車の中ではトップクラスで、カップホルダーウォーマー/クーラー、シートマッサージ、いたるところにあるUSB-C端子、多彩な安全装備機能など、挙げれば枚挙にいとまがない。
装備に関しては、カイエンの比ではなく、この点でのコストパーフォーマンスは最高だ。
メルセデス・ベンツGLS、総評
今回のGLSはとても乗りやすく、快適なSUVであることには間違いない。ボディサイズさえ許せば、街中での買い物や、移動もストレスなくこなせ、超快適車である。
一方で、1000万円を超える超高級車として見た時に、もう少し走りの重厚さやトロみ、みたいなものが欲しい。走りの高級感という意味では、妻も同じことを言っているが、以前に試乗した新型カイエンの方がタイヤの接地感、転がりの滑らかさ、駆動系のスムーズさなどで一枚上手だと感じた。
お肉でいうと、霜降りの高級肉を想像していたのに、意外とあっさり系のお肉で美味しくて食べやすかった、というのが感想だ。このあっさり系が好みの人にはドンピシャだろうが、口が霜降り肉を欲していたお客さんにとっては、少し物足りなさが残る結果になるだろう。
とはいえ、まだこのGLSの評価を下すには早いと思っている。前述した『E-ACTIVE BODY CONTROL』装着車に機会があれば乗ってみたいものだ。まだわが家のSUV選びはしばらく続きそうだ。
*画像出典:メルセデス・ベンツ「The GLS」
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