フェアレディZ NISMO (RZ34)が納車!ポルシェ乗りのファーストインプレッション

フェアレディZ NISMO
レビュー・試乗記

長かった…。実に2年半もの間、納車を待ち焦がれた日産のフェアレディZ NISMO(RZ34)がついに手元にやってきた。

そもそも、フェアレディZ NISMOの注文に至る経緯は少々複雑だ。当初は通常モデルのフェアレディZを申し込んでいたのだが、その後、NISMOバージョンが発表され、抽選に申し込んだところ、運良く当選。

この幸運を逃す手はないと、NISMOモデルへの変更を決断したのだ。

フェアレディZニスモ(RZ34)との対面 – オーラを放つエクステリアと、洗練されたインテリア

ディーラーで対面したフェアレディZ NISMOは、「ただ者ではない」オーラを全身から放っていた。

専用色のステルスグレーは、一見するとマット調に見えるが、実際には深みのある光沢を湛え、実に美しい。そして、フロントリップやサイドシルなどに配された赤いアクセントラインが、NISMOモデルであることを強烈に主張する。この絶妙なカラーリングと、NISMO専用パーツの組み合わせにより、エクステリアは非常に洗練された印象だ。

フェアレディZ NISMO

高速道路を走行中、他車からの視線を強く感じる。その注目度の高さは、このクルマの希少性とデザインが持つ魅力の証左だろう。

インテリアも、エクステリアに負けず劣らず魅力的だ。まず目を引くのは、NISMO専用のレカロ製バケットシート。体をしっかりとホールドし、長時間の運転でも疲れを感じさせない。さすがはレカロ、その実力は伊達ではない。

メーターパネルやスタートボタンなど、随所にNISMO専用のデザインが施され、赤いステッチやアクセントが、ドライバーの気分を高揚させる。ドライビングポジションも、私の体型には完璧にフィットし、スポーツカーとして理想的なポジションを容易に取ることができる。

フェアレディZ NISMO

フェアレディZ NISMOのスタートボタン

フェアレディZ NISMOのメーター

さらに、車内空間の広さも特筆すべき点だ。スポーツカーでありながら、窮屈さを感じさせない、リラックスできる空間が確保されている。このあたりは、さすが国産車、日常での使い勝手も考慮されている。この室内空間の快適性はポルシェより好きだ。

ただし、ナビやセンターコンソールのデザインには、若干の古さを感じるのも事実。とはいえ、操作性に不満はなく、実用上は問題ないレベルだ。

V6エンジンの咆哮と、軽すぎる?操作系

ブレーキペダルを踏み込み、赤いスタートボタンを押すと、V6エンジンが目を覚ます。

そのサウンドは、輸入スポーツカーに比べれば控えめだが、普通のクルマよりは十分に大きい。
アイドリング時の振動もほぼ皆無で、快適性は高い。そして、エアコンの効きの早さには驚かされた。ポルシェとは対照的だ。

9速ATは、NISMO専用のチューニングが施され、非常にスムーズな変速を実現。
変速ショックもほとんど感じられない。しかし、アクセルペダルとブレーキペダルが、私には少々軽すぎるように感じられた。妻も同様の意見で、輸入車に慣れている身としては、もう少し重めのセッティングの方が、コントロールしやすく、スポーツカーらしいダイレクト感を得られるのではないかと思う。

フェアレディZ NISMOのメーター

ステアリングフィールも同様で、街中での取り回しは楽だが、スポーツ走行時にはもう少し手応えが欲しいところ。スポーツモードやスポーツプラスモードにすれば、ある程度は改善されるが、これがデフォルトの設定でも良いのにと思う。

ここで、正直に告白しなければならないことがある。それは、車内に漂う「新車の匂い」だ。これは、国産車特有の樹脂や接着剤のような匂いで、好みが分かれるところだろう。私自身は、あまり好きではない。輸入車も匂いはあるが、ここまで化学的な類の匂いではない。

そして、走り出してすぐに感じたのは、エンジンの圧倒的なスムーズさとパワーだ。
軽くアクセルを踏み込んだだけで、後輪が路面を蹴り上げる感触が伝わってくる。V6エンジンとは思えないほど、スムーズかつパワフル。エンジンの出来栄えは、個人的には100点満点中90点前後を付けても良いだろう。

フェアレディZ NISMO

一般道での評価は「乗り心地の悪さ」が露呈

しかし、街中での乗り心地は、正直に言って「悪い」。

バネの硬さ自体はスポーツカーとして許容範囲内、むしろ少し柔らかいくらいだが、問題はダンパーだ。路面の凹凸を拾うと、車体が上下に揺すられ、その揺れがなかなか収束しない。まるで、改造してバランスが崩れた走り屋のクルマに乗っているかのような感覚だ。

高速道路のカーブで、スピード抑制ハンプが連続する所などを走ると顕著で、上下動の揺れ残りを強く感じる。

この乗り心地の悪さは、フェアレディZ NISMOの開発コンセプトである「Buddy on Track」、つまりサーキット走行を重視した結果なのかもしれない。もしくは、国産車にありがちな、後で社外品の車高調などを入れる前提での開発なのかもしれない。
しかし、同じ価格帯のわが家のポルシェ・ケイマンTなどは、サーキットでも十分に通用する性能があるが、一般道でも、優れた乗り心地を実現している。それに、これは天下の「NISMO」だ。純正のままでも最高の製品をユーザーは期待している。この点に関しては、日産にさらなる努力を期待したい。

フェアレディZ NISMOのホイール

また、ワインディングロードでは、ダンピング不足が、ハンドリングにも悪影響を及ぼしているように感じる。
コーナリング中に荷重が安定せず、狙ったラインをトレースするのが他のライバルより難しく、スポーツ走行を楽しむには、少々不安が残る。
もっと上下動なく、ビシッと狙ったラインを走ってほしいと思う。

これはそんなことあるわけない、と言われるのを覚悟の上で言うが、ワインディングを始めて走った時の気持ちよさや感動は、テスラのモデル3の方が上だ。あの時は「なんだこれ?スポーツカーじゃないのにすごい!」と思わず言ってしまうほど、気持ちよさとドライバーの意思が忠実に挙動に反映していた。そういう感動は残念ながらなかった。これは当ブログのテストドライバーとして度々登場するTAKUROさんも試乗したが同意見だった。

もちろん、フェアレディZ NISMOが、サーキット走行を主眼に置いたクルマであることは理解している。
しかし、同価格帯のライバル車が、サーキットと一般道の両方で高い性能を発揮し、低速域でも圧倒的な接地感と安心感を実現していることを考えると、それは言い訳にならない。
もう少し、一般道での快適性や操縦安定性にも配慮してほしかった、というのが正直な感想だ。

高速道路では本領発揮!

高速道路では、フェアレディZ NISMOの印象が一変する。

エンジンは、どこまでもスムーズに吹け上がり、追い越し加速も楽々。このエンジンは本当に素晴らしい。9速ATの変速も素早く、マニュアルモードでの操作も楽しめる。スポーツモードにすれば、人工的に作られたサウンドだが、さらに気分を高揚させてくれる。ちなみにこのサウンドはとても気持ちよく、個人的には全く違和感はない。

そして、スピードが上がるほどに、車体は路面に吸い付くように安定。ようやく、サスペンションの真価が発揮される。このクルマは、高速域での走行性能に、焦点を合わせて開発されたのだろう。ただし、高速道路での走行性能が高いからといって、一般道での乗り心地の悪さが許されるわけではない。日常での使い勝手を考えると、やはり、もう少し改善の余地があると感じる。

フェアレディZ NISMO

今回のファーストインプレッションは、あくまで納車直後の、限られた条件下での評価だということを断っておく。
今後、さらに走行距離を重ね、様々なシチュエーションでフェアレディZ NISMOを試すことで、新たな発見があるかもしれない。

その際は、改めて詳細なレビューをお届けしたいと思う。

Hiro

Minaの夫です。 ファッションやステータスシンボルのためにクルマは乗りません。運転して楽しく、工業製品として優れ、作り手の意思が感じられるようなクルマを好...

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  • コメント ( 8 )

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  1. のに

    奇遇ですが、同じ色のZ nismoが一昨日納車になりました。
    乗り心地以外はアメ車っぽいなあという印象です。まっすぐな道をかっ飛ばす車なのかな、と。

    しかし、とてもカッコいいし、国産だけあって、装備は至れり尽くせりなので、
    遠出用の車にぴったりかも。しばらくは塩カルの影響で高速を走りたくないので、山道を
    走ってみようと思います。

    最後に質問です。
    Z,慣らし運転しますか?ポルシェなら、がっつり慣らしますが、国産のこの子はどうしたものかと、思案中です。

    • HiroHiro

      のにさん、こんにちは。
      同じ色のZ nismoですか!奇遇ですね!
      とてもカッコいいし、装備的には快適ですよね。

      慣らしは、そんなに厳密にはしませんが、一応、しています。
      回しても4000-5000回転くらいまでにして、できるだけ急加速はせず、
      回すときもゆっくりと高回転まで回してあげるように気をつけています。

      1
  2. マーク

    お久しぶりです。
    たぶんタイヤも影響してると思います。
    ミシュランスポーツのいつも愛用されている
    タイヤに交換されてから、様子みるほうが
    いいかもですね。

    • HiroHiro

      マークさん、こんにちは。お久しぶりです!

      はい、そう思いました!
      タイヤはダンロップのSPORT MAXX GT600なのですが、かなり固いタイヤです。
      しかも熱を入れないとカチカチで、低温にかなり弱いですね。。。
      ミシュランを入れたいのですが、そこまでお金かけるのもなぁ・・・と思案中ですw

  3. daytona

    >エアコンの効きの早さには驚かされた。ポルシェとは対照的だ。

    ポルシェはエアコンの効きが遅いのですか?
    遅くても効けばいいですけど。
    今まで乗ったドイツ車は暖房は早く効くけど、冷房は遅い傾向(冷たい風が出るまでしばらくかかる)がありました。

    • HiroHiro

      daytona さん、こんにちは。

      ポルシェはエアコンというか、暖房の効きが遅いです。(効きは悪くないです)
      空冷ポルシェはすぐに効きますが、水冷ポルシェは、フロントのラジエターまで冷却水をひっぱり、
      かつ、かなり冷却効果の高いラジエターなので、なかなか暖房が出てくれないです。
      特に、981のGTSは15分、下手すると20分近く、まともな暖房が出ません。。。911の方がまだマシです。

      それに比べると、Zは5分くらいで暖房が出るので快適です。

      1
  4. kei

    いつも、試乗レビュー楽しみにしています。

    新車時の匂いですが私も好きにはなれませんが輸送の期間の問題ではないでしょうか?

    私も、あの匂いは苦手なので無香料の消臭ビーズを倒れないようにセットしています・・・。

    • HiroHiro

      keiさん、こんにちは。

      あの匂いは調べてみると、接着剤や樹脂、シート地などの匂いのようです。
      対策として樹脂部分を熱いお湯の濡れタオルで拭くと、匂いが取れやすいそうです。
      今度、私もやってみようと思います。