「どんなヘッドライトのクラックも、絶対に直す」ヘッドライトリペア専門店、カーゴシゴシにインタビュー
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「あそこに頼めば、どんなヘッドライトのクラックでも、100%直る」そうお客が口を揃えるお店が、愛知県豊川市にある。
ヘッドライトリペア専門店の、カーゴシゴシ。
ディーラーでは直せないと断られたお客たちからのヘッドライトが、毎月平均して25個ほど届く。
ヘッドライトのクラックとは、蜘蛛の巣のように無数に入った細かいヒビのことだ。
このクラック、外から触る分には凹凸や引っ掛かりを感じられないため、一般的には「ヘッドライトの内側にできたヒビだ」と認識されている。
そのためディーラーに持ち込んでも「直せない。新品と取り替える他無い」と言われてしまう。
新品に取り替えるといっても、ポルシェの場合、ヘッドライトの値段は左右合わせて30万円を超える。あまりに高額なため、「なんとか直せる方法はないか」とネットで調べてカーゴシゴシにたどり着いたポルシオーナーからの問い合わせが、最近特に増えているという。
カーゴシゴシは、コーティング会社として創業し、今年で12年目を迎える。そして約5年前、ヘッドライトのリペア専門店として、大きく舵を切った。
「どんなヘッドライトのクラックでも、100%直してくれる」とお客が絶大なる信頼を寄せる、お店のオーナーの三瀬(みせ)さんに、話を聞いた。
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ヘッドライトリペア専門店のカーゴシゴシ
三瀬「近場のお客様には、直接お店にクルマを持ち込んでいただき作業しますが、大半は、ヘッドライトを郵送で送ってもらい、お店で修理した後、返送する方法をとっています。
これまでに手かげたヘッドライトのリペア件数は『600件』ほどですね。メーカー・車種問わず、どのようなヘッドライトでも対応可能です。
5年前、ヘッドリペア専門店として歩み始めた頃は、『これはさすがに直せない』というヘッドライトも正直ありました。その時は、お客様に対して大変申し訳ない気持ちと、自分自身に対する悔しさでいっぱいでしたね。
以来、日々研究を重ね、工夫改良を加えていった結果、現在は、どんなメーカーの、どんなクラックのヘッドライトがきても、100%直せると自信を持って答えられるまでになりました」
ヘッドライトのクラックの原因や、修復の技について
毎日のようにヘッドライトのクラックを修理している三瀬さん。そもそもクラックは何が原因で起こるのか、そのあたりについて聞いてみた。
三瀬「国産車と、ポルシェのような欧州車とでは、クラックが起こる原因は異なります。
国産車のヘッドライトは、紫外線を浴び続けることで劣化して、ひび割れを起こすことが多いです。そのため、『屋外の駐車場に停めているクルマには、クラックが起きやすい』と言われています。
一方、欧州車の場合は『春夏秋冬の気温の変化により、ヘッドライトの内側の空気圧が変化し素材が収縮するものの、ヘッドライトを覆うハードコートが硬すぎて伸び縮みしないことで、ひび割れが起きる』ことが原因の大半です。
例えるならば…表面に硬い樹脂を塗った風船を膨らませると、硬い樹脂に覆われた風船は行き場がなくなり割れてしまうと思うのですが、そんなイメージですね。
ポルシェのような欧州車のハードコートは、とても分厚く硬くコーティングされています。
以前『どれほど硬いのか知っておきたい』と思い、練習用に購入したヘッドライトをたわしでゴシゴシ擦ってみましたが、全く傷がつきませんでした。
ハードコートがもっと柔らかければ、気温の変化によるヘッドライトの収縮にも対応できると思いますが、『日本には四季があるので、メーカーに頼んで、日本仕様のヘッドライトのハードコートだけ素材を変えてもらう』などということは、できないですからね…」
つまり、ポルシェのような欧州車の場合、紫外線を避けて屋内駐車場に停めていたとしても、季節の温度変化によってヘッドライトの素材が収縮し、クラックが起こる原因になるということだ。
またクラックは、年式の古いクルマだけではなく、比較的年式の新しいクルマにも起こり得ると三瀬さんは言う。
三瀬「ポルシェだと最近は、先代ボクスターやマカンのヘッドライトリペアの依頼が増えました。オーナーさんからは『車体はとても綺麗なんだけど、ヘッドライトだけがバキバキになってしまった』という声をよくお聞きしますね。
駐車場にエアコンや除湿機が完備されており、1年を通じて同じ温度・湿度に保っておける環境であれば問題は無いかもしれませんが、実際はなかなか難しいと思います」
ただこのクラック、外側から触っても凹凸が感じられないため、一般的には「ヘッドライトの内側に出来たヒビだと思われている」とのことだが、そのヒビを、一体どのようにして修復するのだろうか。
三瀬「お客様からも、『ディーラーでも断られたヘッドライトの内側のヒビを、本当に直せるのですか?』と、ご質問頂くことが多いです。
実はヒビが入っている箇所を正確に言うと『ハードコートの内側、かつ、ヘッドライトの外側』なんです。
つまり、まずは外側のハードコートを研磨し、ヒビに到達した後、そのヒビを綺麗に研磨すれば、元の綺麗な状態のヘッドライトに戻せるという理屈です。
ただ、ヘッドライトの形状をたもったまま、綺麗に修復するのは決して簡単なことではなく、3つのポイントを押さえる必要があると考えています。
まず1つ目は、『ヘッドライトの形状や構造を熟知しておく」こと。
メーカー・車種・モデルによって、ヘッドライトの形状は当然異なります。
例えばポルシェ。ポルシェのヘッドライトは大変綺麗な丸みを帯びていますが、その形状やデザインは『911とボクスター』で違いますし、同じ911の中でも『991型と992型』で異なります。
それらのヘッドライトの形状を理解せず安易に研磨してしまうと、ヘッドライトの綺麗な丸みに変な歪みが出てしまったり、光沢が蘇らなくなってしまいます。
ありとあらゆるメーカーや車種のヘッドライトを修復し、今ではヘッドライトの形状や特徴を熟知するまでになりましたが、このことは、ヘッドライトリペアにおける非常に重要なポイントだと思います。
そして2つ目は『研磨するヤスリの目の調節』です。
ポルシェのハードコートはかなり硬いので、通常の研磨機では刃が立ちません。ですから、特殊な研磨機を使います。
そして最初は、粗いヤスリでハードコートや素材のポリカーボネートを削っていくのですが、次第にヘッドライトがこんな風に真っ白になっていきます。
またポルシェのヘッドライトは、構造上、一度ヒビが入ると、他のどのメーカーよりもヒビが深く入りこみ、蜘蛛の巣のようになってしまいます。
ですから、そのヒビの深さにあわせてヤスリの目を微妙に調整しながら研磨していくのですが、当然、削りすぎると取り返しがつかないので、ヤスリの目を調節しながら丁寧に作業を進めていく必要があるんです。
3つ目は、『時間をかけて慎重に研磨する』ということです。
一気に研磨するのではなく、元の綺麗な状態をイメージし、慎重に慎重に、作業を繰り返していきます。
1〜2時間、集中した状態で研磨し続けることもよくありますし、リペア後にプロテクションフィルムを施工して完成させるまでには、5〜6時間かかるので、正直、結構疲れますね(笑)
とはいえ、ヒビが消え、新品のように綺麗に生まれ変わったヘッドライトを見てお客様が喜ばれる姿を想像しながら、毎日一つ一つ心を込めて作業をしています。
通常は、ヘッドライトを送って頂いてから修理して返送するまで3日~、繁忙期であれば1週間程度お時間を頂いています」
元の状態に修復するには、それ相応の技術力が求められるヘッドライトのクラックの除去。三瀬さんは、ヘッドライトを新品同様に綺麗にするだけではなく、その後の耐久性のことまで考えて、作業にあたっているという。
三瀬「ポルシェのような高級車のヘッドライトを持ち込んで頂く際、このような質問を頂くことが多いです。
『ポルシェの純正のハードコートを全て削ってしまうことで、修復後のヘッドライトの耐久性には問題はないのか?』
と。
お客様が不安になられる気持ちはよく分かります。大切な愛車のカッコいいヘッドライトが、クラックの修復によって傷がつきやすくなったりしないのか…と思われるのは当然です。
ただ、結論から言うと、クラック除去作業をすることで、ヘッドライトの耐久性が落ちることはありません。
理由は2点。まず『ヘッドライトは、ちょっとやそっと削ったくらいで耐久性が崩れるほどやわでは無い』ということです。
実はずいぶん前に、ヘッドライトをどの程度削れば穴が空くのかと思い、試してみたことがあるのですが、かなり頑張って研磨しても全く刃が立たず、途中で心が折れ、諦めました(笑)
クラックのヒビは深くてもせいぜい0.5ミリ程度ですが、一般的なヘッドライトのレンズの厚さは、約5ミリほどもあるんです。
ヘッドライトを意図的に削ったり穴をあけようと頑張っても、全く刃が立たない上に、通常の作業では、ヒビのみを除去するよう、慎重に研磨するので、その後のヘッドライトの耐久性に影響が出ることはありません。
理由の2点目は『クラックを除去して綺麗にリペアした後、プロテクションフィルムを施工することで、純正新品時よりも高性能高耐久のヘッドライトになる』からです。
ヘッドライトのプロテクションフィルムは非常に高性能で、
・フッ素加工されており、超撥水・防汚性がある
・200km/hのスピードで飛び石が当たっても貫通しない(ヘッドライトレンズは無傷)
・洗車キズ程度であれば熱をかければ消えてしまう自己修復機能
という機能を持っており、純正ハードコートよりも高性能です。
膜厚も150ミクロンあり、ほとんどの場合、研磨した分をしっかり補充する厚さがあります。ですから、研磨後のヘッドライトの耐久性については、ご安心いただければと思います」
形状や特徴が異なり、修復には技術も手間もかかる。また、うまく直せなかった時のことを考えると、クラック修復を断るお店が多いことも頷ける。三瀬さんは、そのあたりのリスクについては、どんな風に考えているのだろうか。
三瀬「今でこそ、『どんなヘッドライトが来ても直せる』と言い切れますが、やり始めた頃はとても怖かったです。
高い技術力に加え、時間や手間が必要になりますから、ディーラーが『リスクや手間を考えると、新品と交換してもらう方が良い』と判断をするのもよく理解できました。
実は以前ディーラーから『クラックを修復しようとヘッドライトを研磨したら、表面が真っ白になってしまった。もうどうにもできないのだが、直してもらえないか?』と問い合わせがあり、実際に修復させて頂いたこともありました。
もちろん『100%、絶対』と言い切るのは無理があるとは思いますが、限りなく100%に近い確率で、どのようなヘッドライトが送られてきても、直せる自信が今はあるからこそ、できる仕事なのだと思います」
ヘッドライトリペア専門店に舵を切った背景
そもそも、ヘッドライトリペア専門店をなぜ始めようと思ったのか。その理由を三瀬さんに聞いてみた。
三瀬「最初から、ヘッドライトリペア専門店をやろうと思っていた訳ではありませんでした。
お店を開業した後、『自分のお店が日本一になれる領域はどこなのか』と思案を重ねた結果、辿り着いたのがヘッドライトリペア専門店だったというわけです。
クルマ好きの方を前にして言うのもなんですが…僕はもともとは『クルマが大好き』というわけではありませんでした。ただ『将来はつなぎ(作業服)を着られる仕事がしたい』と思っていました。
なぜなら、自分がスーツを着て働くという姿が、全くイメージ出来なかったんです(笑)
高校卒業後は、整備の専門学校に入り、そこでクルマのことを勉強するにつれて、『クルマって奥が深くて面白いなぁ』と思うようになりました。
クルマに興味が湧いてきたのは、その頃からですね。
専門学校で整備士の免許を取得した後は、大手ロードサービスの会社に就職。そして入社5年目のある日、運命の出会いがありました。
バッテリー上がりの連絡を頂いてかけつけた先のコーティング屋で、コーティングの仕事を見せてもらった時に、『なんと面白い仕事なんだ!僕もこの仕事がしたい!』とビビっと来たんです。
その後、東京のお店に修行に行き、技術を学び、クルマのコーティングのお店を開業しました」
念願のコーティングのお店を開業した三瀬さんだが、お店の経営は、決して順風満帆とは行かなかった。以前のコーティング専門店は、ディーラーからコーティングを外注することで、ある程度の仕事を確保することが出来ていた。ただ次第に、ディーラーがコーティングサービスを内製化するようになり、お店に仕事が回ってこなくなった。三瀬さんのお店も例外ではなかった。
三瀬「コーティングの仕事が無くなっていくのを、何もせずに黙って見ているわけにはいきませんでした。
そこで『自分のお店が一番になれる技術やサービスって何だろう』『近場のお客様だけではなく、全国のお客様に対応できるサービスって何だろう』と考えに考え抜いた末、約5年前に、『ヘッドライトに特化しよう』と決めました。
とはいえ当時は、ヘッドライトのリペアについての知識が無かったので、ヘッドライトのメーカーに足を運び、ヘッドライトの構造や、黄ばみ除去の方法などを、いちから勉強しました。
そして、その勉強の過程で『ヘッドライトのクラックは直せる』ということを知ったんです。
目からウロコでしたね。
他のお店がやりたがらない領域ではありましたが『自分のお店が勝つにはこれしかない。技術的には難しく、他店がやりたがらないことであっても、僕はヘッドライトのリペアで1番になる!』と決めました。
極力出費を抑えながらも技術力を向上させるため、三瀬さんは、ヤフオクでヒビの入ったボロボロのヘッドライトを購入。それを仕事終わりに夜な夜な研磨し綺麗にしては、またヤフオクで出品することを繰り返し、次第に技術力を磨いていった。
そして「他のお店で断られたヘッドライトのリペアも全て受ける」ことをうりに、ヘッドライトリペア専門店として新たなスタートを切った。
お客様に、カーライフをもっと楽しんでもらいたい
現在カーゴシゴシでは、LINEを使い、お客の問い合わせに対応している。メールではなくLINEを使用するのは「お客様が手軽にやり取りでき、安心・納得した上でヘッドライトリペアを任せて頂けるようにしたい」という三瀬さんの思いがあるからだ。
三瀬「お客様からは、『メールよりも気軽なので、LINEでやり取りできて助かる』と言っていただくことも多いです。
LINEで、お客様にクラックの様子が分かる写真を送っていただいたり、質問にお答えしたり、同一車種の修理後の写真をお送りするなどして、『ここなら任せて安心だ』と納得していただけるよう、意識しています。
ヘッドライトリペアに全身全霊で取り組む三瀬さんに、この仕事のやりがいについて聞いてみたところ、こんな答えが返ってきた。
三瀬「『もう直せない、高額な費用を払って新品のヘッドライトに交換するしか無いと思っていたのに、こんなに綺麗に直してくれて有難う!』という言葉をいただくことが、何よりの喜びです。
ヒビの入ったヘッドライトが新品同様になって返ってきたら、きっとお客様は驚かれるだろうな、喜ばれるだろうな…と想像しながら仕事をしていますが、実際にそういうお客様の喜びの声を頂くことが、一番のやりがいですね」
最後に、ヘッドライトリペアに特化してきた三瀬さんの今後の展望や、想いについて聞いてみた。
三瀬「『ヘッドライトのクラックは、修理で直せる』ということを、もっと多くのクルマのオーナーさんに知ってもらいたいです。ディーラーで断られたことで、『もう無理なんだ』と諦めてしまっている方が本当に多いんです。
保証期間内であれば無料で取り替えてもらえると思いますが、保証期間が過ぎてしまうと、ポルシェであれば左右で30万円以上かけて取り替えるしかありません。
もちろん、その値段を払って新品に取り替える』オーナーさんもおられると思いますが、『できればもっと費用を安く抑えて新品同様に出来ないか』と考えるオーナーさんも多いと思うんです。
そんな方々に『ヘッドライトのクラックは直せる』ということを知らせたい。
ですから現在、自社のホームページにもかなり力を入れており、全国の悩めるクルマオーナーの方に見つけて頂けるよう、工夫して運営しています。
カーゴシゴシのヘッドライトのクラック除去の施工代は約4万円。業界の相場と比べると少し高いです。でもその分、お客様に満足頂ける技術力があるという自負はあります。
少し磨いて一時的にヒビを綺麗にするのではなく、ヘッドライトの素材の特徴を理解し、適切な下地処理を行うことで、コーティングなどの保護剤を施工しなくても、年単位の耐久性を持つことができる。
そういったところも含めて、価値を感じて頂けると嬉しいですね。
三瀬「きっと今も、駐車場に停まっている愛車のヘッドライトを見る度に、残念な気持ちになり、ドライブに行きたいけれどやめておこうと思う方が全国におられると思います。
せっかく気に入って購入された愛車なのに、そうなってしまってはもったいないですよね。
でも、ヘッドライトが綺麗になり、愛車が元の状態に戻ったら、今よりもっとドライブに出かけたくなり、その後のカーライフはさらに楽しくなるはず。
全国のオーナーさんが、楽しいカーライフを送るお手伝いができるように、僕もこれからも、もっと、腕を磨き続けます」
数多くのヘッドライトを修復してきた三瀬さん。高い技術力を誇り、お客に満足や感動を提供してきた彼の挑戦は、まだ、始まったばかりである。
■ヘッドリペア専門店「カーゴシゴシ」さんのHPはこちら
https://headlight-kibami.com/
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コメント ( 2 )
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Minaさん、Hiroさん、いつもブログやスペースなど、楽しく拝読・拝聴しております。
今回、この記事を参考にしまして、991前期型カレラS(2014年登録)のヘッドライトレンズのリペアとプロテクションフィルムを「カーゴシゴシ」さんで施工していただきました。
一年前に購入した時から、クリア塗装の剥がれ、微小な表面のクラックや小キズが気になっていて、やっとリペアをお願いすることにしたのですが、結論、やって良かったです。1ミリの後悔もありません。記事の通り、新品と言われても信じてしまうような仕上がりで感動しました。
間違いなく、施工料金以上に車の価値が上がったと思っています!
いつも参考にさせていただくばかりで恐縮ですが、感謝の気持ちもこめてコメントさせていただきました。
MKENさん
おぉーそうなのですね!
良かったです…!
カーゴシゴシさんの技術へのこだわりは本当にすごいですもんね!
わざわざご連絡いただき有難うございます!
とても嬉しいです^^
引き続きどうぞよろしくお願い致します!