BMW アルピナ D5Sに試乗!初のアルピナはどう感じた?

ALPINA D5S
レビュー・試乗記

アルピナ D5S

個人的にBMWについてはとても好きなメーカーであることは、過去の記事で何度も触れている。E36の318isに乗って以来、BMWの走りや、楽しさはとても好きで、今も機会があれば所有したいメーカーの一つだ。

そのBMWの中でMと双璧をなすハイパフォーマンスモデルといえば『アルピナ』。このアルピナについては、いつか乗ってみたい、欲しいと思いつつも、全く未経験だったのだが、今回、友人がD5Sを購入したということで試乗させてもらった。

ALPINA D5S

今回のクルマはG30前期型をベースにしたD5Sだ。2993ccの直列6気筒DOHCディーゼルターボエンジンからは、326ps/4000〜4600rpm、700Nm/1750〜2500rpmもの大トルクを生み出す。

0-100km/h加速4.9秒、そして巡航最高速度は275km/hである。ここで注意してほしいのは、アルピナの場合、最高速を表す時に『最高速度』とは言わない。『巡航最高速度』と表現するのだ。

この速度で巡航できるという値をメーカーが示しているのは、それだけクルマに対しての自信の表れでもあり、そして、そういう超高速ツアラーとしての性格をしっかりとアピールしている。

ALPINA D5Sの内装

外装は通常のBMWにもあるブルーストーンメタリックで、アルピナによくあるストライプは無しの仕様。アルピナとは必要以上にアピールしない『能ある鷹は爪を隠す』仕様の粋なアルピナである。

内装はアルピナ独特のウッドにベージュのレザーがとても美しく、シートの座り心地もとても良い。

アルピナのディーゼルエンジン

アルピナのディーゼルエンジンはとても評判は良く、あちこちで絶賛されていたので、とても興味があった。

私はもともとディーゼルはあまり好きではない(私のクルマの走り方に合わないだけ)が、このアルピナのエンジンを体験すれば、その考えも変わるかもしれないという期待もしつつ、エンジンをかけた。

ALPINA D5S

とても静かにアルピナのディーゼルエンジンは始動する。走り出してみるも、超低回転からの700Nmもの大トルクなので、もっと扱いにくいほどのトルク感を想像していたが、そういう感じはあまりなく、普通にトルクフルなクルマという感じで、とても滑らかにスピードを乗せていく。

走り出すと、始動時は静かだったエンジン音は普通に聞こえてくる。むしろ、やや勇ましさすら感じる。ディーゼルエンジンと言えども、それなりにエンジン音を聴かせる仕様のようだ。音質は、車内で聴く限りディーゼルらしさはほとんどない。

ガソリンエンジンの4気筒ターボくらいの音質で、スポーティー感もある。

見せてもらおうか、アルピナマジックとやらを

カーブが連続する区間で、少しペースを上げながらステアリングを切ってみる。するとかなり挙動はマイルドだ。「あれ?めちゃくちゃ普通のセダンみたいだな」と最初は思った。

乗り心地は抜群によく、普通のBMWの5シリーズで感じる小さなコツコツ感の角をひとつひとつ丁寧に手で取り除いた感じとでも言おうか、大きな凹凸も小さな凹凸も、衝撃の度合いはほぼ同じ。とても丁寧に処理しているというのが第一印象だ。

先日試乗したBMWの840iも素晴らしい乗り心地だったので記憶に新しいが、あれとは少し乗り心地の良さの種類が違い、あちらは軽やかな中での乗り心地の良さ、こちらはしっとりした中での乗り心地の良さという感じだ。

一方で、ディーゼル特有なのだろうか、振動というより、もっと細かい、ガソリン車には無いザラザラ感みたいなものをステアリングやシートから感じる。

いくつかコーナーを曲がってみると、ロールは明確に大きく、むしろ普通の5シリーズより柔らかい感じに思える。とはいえ、曲がらないわけではなく、ロールこそ大きめに感じるが、しっかりと粘り曲がっていくので不安感はない。

途中でスポーツモードに変更。すると、途端にクルマは豹変する。エンジン制御よりも足回りの変化が大きい。いきなり、クルマが目を覚ました様な感じになり、ハンドリングの正確性が急に増す。スポーツモードにした途端、「あ、めちゃ運転しやすくなった!」と言ってしまうほど、クルマの挙動が変わった。

タイヤの接地感は強くなり、ステアリングを切ったら切った分だけ、スッと鼻先が向いてくれるようになる。ロールは明確に減り、クルマ全体の俊敏性が増している。

しかもだ、乗り心地が全く変わらない。スポーツモードにしても乗り心地があまり悪くならないというクルマは多いが、ここまで変わらないクルマも珍しいのではないだろうか。

ALPINA D5Sのホイール

明らかにステアリングのレスポンスは向上しているので、減衰力は高まっているはずだ。なのに、コンフォートモードと同じレベルでの凹凸の処理を実現しているように思う。「なるほど。これがアルピナの足なのか!」とようやく分かった気がした。

足回りの印象としては、とても粘る足という表現になる。固めて突っ張った感じではなく、しなやかなのに、しっかり踏ん張るのだ。この相反するようなフィーリングがこのクルマの特徴だろう。

今回は高速道路での試乗はできていないが、芦有のアンジュレーションのきついトンネル内でも微動だにしない直進安定性は確認できた。おそらく、このフィーリングなら高速の安定性、ドライバーが感じるスピード感の無さはかなりの高レベルにあると思う。

ディーゼルエンジンはありか?

今回、ワインディングを走らせてみて、十分にこのディーゼルエンジンはパワフルで、かつ回転フィーリングも良いというのは間違いない。しかし、一つ言うとするならば、これはアルピナがどうこうという話ではなく、ディーゼルエンジンの仕様上の制約なので仕方ないのだが、レッドゾーンが低すぎる。

ALPINA D5S

ステアリングの裏のシフトボタンを操作して、マニュアル変速しながら、エンジンの美味しい回転域にタコメーターの針を留めて、走っていると、あまりに回転がスムーズでディーゼルらしくない感じなので、ついつい、普通にエンジンを回そうとしてしまう。

しかも、エンジン音的にも全く苦しそうな音ではなく、アルピナが奏でる音はむしろ良い感じの音だ。頭の中ではガソリンエンジンの4000rpmくらいの感覚で、あと2500rpmくらいの余裕はあるという風に感じでアクセルを踏もうとする。

しかし、ふと、タコメーターに目をやると、もう針は5000rpmのレッドゾーンがすぐそこに迫っているのだ。

え、もう終わり?!」という感情が出てきてしまう。現実に引き戻される瞬間だ。せっかくのエンジンを楽しもうとしているのに、クライマックスを迎える前に終わってしまう。

この感覚だけは、やはり、アルピナといえどもどうにもならないのだろう。いや、むしろ、アルピナはあまりにもスムーズなディーゼルエンジンを持つがために、私にとっては、もっと回したいという欲求だけが残り、フラストレーションが余計に溜まってしまったという結果になってしまったのだ。

とはいえ、これはあくまでワインディングをエンジンを回し気味にして走行するという限られたシチュエーションでの話である。

多くのドライバーがメインで利用することになる、日常の街中や都市間の移動、そして高速道路などでは、このディーゼルエンジンの分厚いトルクと、ハイギヤードな設定が、素晴らしい運転のしやすさと、安楽さをもたらしてくれることは間違いない。

私が思うにこのアルピナは『アーバンエクスプレス』である。都会に生き、加減速の多いシチュエーションでの移動や、長距離の移動が多い方にこそオススメであり、そういうシチュエーションでの最高のパワートレインを持つクルマだ。

もし、ディーゼルエンジンかガソリンエンジンかで迷っている方がいらっしゃるなら、それぞれのエンジンの特性を理解し、自分はどちらのシチュエーションでの運転を楽しみたいのか、を明確にして購入すると良いだろう。

しかし、いずれにせよこの『アルピナマジック』は健在である。シャシー性能、足回りは抜群である。これだけでも十分に楽しめ、価値のあるクルマだと思う。

Hiro

Minaの夫です。 ファッションやステータスシンボルのためにクルマは乗りません。運転して楽しく、工業製品として優れ、作り手の意思が感じられるようなクルマを好...

プロフィール

このブログが気に入ったらフォローしてね!

コメントを閉じる
  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。