弟のアバルト 595Cが納車された。ポルシェ乗りの兄が乗るとどう感じるか?

アバルト 595C
レビュー・試乗記

アバルト595Cで色々な走りを体感

スポーツモードにしてタイトコーナーを攻めてみる。エンジンのレスポンスは鋭くなり、パワー感も明らかに増す。スポーツモードにしてここまでハッキリと違うクルマも珍しい。

この車体の小ささとホイールベースの短さからして、さぞかし俊敏で、カートのようにクルクル回ってくれるのだろうと想像していたが、意外とこのクルマは安定志向の味付けだ。

ステアリングの操舵力はやや重めで、ハンドルを切り曲がっている最中でもステアリングの復元力がとても強く、直進方向に戻ろう、戻ろうとするのだ。これは以前所有していたマクラーレンの650Sなどとは全く逆の味付けだ。

なので、見た目から想像するほどのクイックさや身のこなしは感じない。

一方で、タイヤの接地感などは強く、安心してコーナーを攻めていける。TTC(トルクトランスファーコントロール)もオフ、オンと試してみるが、一般道を少し速いペースで流すくらいではあまり違いは分からなかった。

このクルマはその辺のコンパクトカーよりはかなりスポーティーな走りだが、見た目ほどの危なかっしさは無いと思っておいた方が良いだろう。

途中で屋根を開けて走ってみる。開放感はとても良い。またエンジン音も上から聞こえるようになるし、かつ、このアクラボヴィッチのマフラーは外で聞く音のほうが快音なので、このオープン仕様にはピッタリだ。

屋根は二段階に開くようだが、全開にすると、それなりに風の巻き込みは強いので、途中の段階で止めておく方が快適性は高いと思う。

そのままワインディングを抜けて、高速道路を試してみる。ホイールベースはたったの2300mmしかない。ホンダのN-ワゴンが2520mmなので、軽自動車より短いサイズだ。

今までアバルトは高速も安定しているという話は聞いていたが、正直、半信半疑なところもあった。

しかし、実際に高速道路で乗ってみると、目からウロコである。

こんなショートホイールベースとは思えない直進安定性だ。追越車線をリードするような速度域でも全く不安はない。ビシッと真っ直ぐに走ってくれる。ロングホイールベースのクルマの直進安定性とは少し違い、ホイールベースの長さで真っ直ぐ走っているのではなく、足回りのセッティングで真っ直ぐ走っているようなフィーリングだ。

先程、ワインディングではステアリングの復元力、真っ直ぐ走ろうとする力が強いと書いたが、そのセッティングが高速道路で活きてくる。フロントタイヤが真っ直ぐに走ろうとする感じがステアリングにとてもよく伝わってくる。

緩やかなカーブで、ステアリングを僅かに切るような場面では、ステアリング角を意識的に維持しないと、真っ直ぐに走ろうとする感覚がある。

そのくらい直進性は高いと思ってもらった方がいいだろう。

なので、少々ハイペースで流しても、全くアバルトはへこたれない。こんなに小さなクルマなのに余裕の高速巡航で前のクルマについていける。軽自動車並みのサイズなのに軽自動車の安定感とは雲泥の差。

大げさな表現だが、自動車と自転車ほど違うと言いたい。

いやはや、こんな超ショートホイールベースでこの直進安定性を出せるチューニングには頭が下がる。さすがはアウトストラーダで育ちである。

約1時間半くらい運転したのだろうか、最初、硬いなと思っていた乗り心地は、気づけば心地よい乗り味に変わっていた。「あー、運転したなぁ」と思わせる満足感と充足感をアバルトは味わわせてくれた。終わってみると清々しい感じすらする。

アバルト595、単なる乗り心地や快適性では語れない「何か」を持ったクルマであることは間違いないようだ。

Hiro

Minaの夫です。 ファッションやステータスシンボルのためにクルマは乗りません。運転して楽しく、工業製品として優れ、作り手の意思が感じられるようなクルマを好...

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  • コメント ( 4 )

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  1. イシ

    Minaさん

    Fiatt500c乗りの私としてはアバルトは飛びつきたい話題です。
    ちなみに私のFiat500cは日本国内には無い仕様の1.2LエンジンのMTで、右ハンドルにこだわってイギリスから仕入れてもらったものです。

    一時はFiat500cからアバルトへの乗り換えを検討したのですが、アバルトだと通勤や近くの買い物など普段使いではパワーを持て余してエンジンが回せないためあえて非力なFiat500cを維持しています。

    アバルト購入を考えて試乗した時に、その時は敢えて助手席も乗りました。運転手を務めた店員さんがアバルトの魅力をアピールしようと張り切りすぎたのか、下道ではあり得ないスポーツ走行をしてくれたのはいいのですが、激しい急減速と硬いサベルトシートのため珍しく車酔いしてしまった記憶があります。店員さんが夢中になるくらい運転が楽しい車だろうと思った一方で助手席はちょっと辛いかなと思いました。

    ボクスタースパイダーの維持が辛くなったらFiat500cとボクスパを手放してアバルト一台にまとめるようなことも考えましたが、今はこのままで行こうと思っています。

    • MinaMina

      イシさん
      夫も「僕が買うんだったら、アバルトじゃなくてフィアットがいいかなぁ」と言っておりました。
      クルマ好きの方が助手席に乗ってクルマ酔いするってよほどですね…

      個人的には、ボクスタースパイダーは私のめっちゃ憧れるクルマなので、
      これからもずっと所有していただきたいなぁと思っています(笑)

  2. Nak

    Minaさん、こんにちは。

    595cいいと思います。
    LHD5MTでシート裏などがカーボンのモデルがあったのですが、これはきびきび走って街中でも楽しいモデルでした。
    多分エンジンは同じような仕様でマフラーもアクラだった気がします。
    一瞬購入を検討したのですが、その当時既にモデルチェンジしていてシートや内装がカーボンでなくなっていたため、なぜか熱意が冷めてしまったのものでした。
    3台目を買うのであれば候補の1台なのですが、以前3台持っていた時には結局乗り切れなくて1台売ってしまったので、うちには2台が最適なのかと思います。

    • MinaMina

      NaKさん
      595cとても良い車みたいですね!
      そしておっしゃるように、家に複数台クルマがあっても、結局乗り切れないですもんね…
      わが家も、おそらく今年は台数を何台か減らす方向で、夫も具体的に考えているみたいで、
      そうなると、1台1台ちゃんと乗ってあげられるようになるかなぁと思っています。

      引き続きよろしくお願いいたします!