ポルシェ997型GT3の魅力:アナログな操縦の楽しさを再発見!

ポルシェ911 GT3(997)
レビュー・試乗記

実はこのブログではなぜか997や987の記事がほとんどない。
特に私が毛嫌いしているわけではなく、むしろ、とても興味はあるポルシェなのだが、なぜか私の周りには乗っている人が意外と少なく、取材の機会も少なかっただけだ。

ポルシェ911 GT3(997)のリアエンブレム

今回、読者の方からぜひ取材してほしいとお話があり、お言葉に甘えて試乗させてもらったので、そのレポートをしようと思う。
なお、いつものことながら、取材とは言えども特に忖度することなく、正直に感じたことを書こうと思う。

ポルシェ911 GT3(997後期型)

今回試乗させていただくクルマは2010年式の997後期型のGT3になる。

あのルマンで活躍したポルシェ・911 GT1系のエンジンユニットをベースにしているエンジンは3.8Lで、435PS/7,600rpm、43.8kg・m/5,500rpmを発生させる。

もちろん、当時はGT3にPDKの設定はなく、マニュアルギアボックスのみである。

ポルシェ911 GT3(997)のシフトレバー

クラッチはかなり重い。オーナーさんによると、社外のツインプレート+軽量フライホイール
に変更されているそうだ。それでも十分な重さである。991・981系もそれなりに重いが、997はそれよりさらに上をいく。

エンジンの始動は996・997系の例に漏れず、始動はそこまで派手ではない。タコメーターの針がじわっと2000rpmあたりまで上がり、すぐにアイドリング状態になる。

軽くアクセルを煽ってみると、始動時のフィーリングとは打って変わって、とてもレスポンスは良い。特にこのクルマの場合は、軽量フライホイールになっているので、回転数の調整が難しいくらいだ。

クラッチを慎重に繋いで走り出す。

ポルシェ911 GT3(997)

サーキット走行を考えて鋳鉄ブレーキにあえて変えてある

まず、最初に感じる第一印象は「乗り心地が良い」ということである。

なお、足回りは純正のPASMでノーマル車高と、全く純正状態だそうだ。991や992のGT3と比べても、当たりがやわらかい。タイヤはADVANのネオバを履いているにもかかわらず、この乗り心地は素晴らしい。

PASMをスポーツして、やっとコツコツし始める程度で、今まで私が乗ったGT3の中では一番、路面への当たりはマイルドだ。

とはいえ、車高は低くストロークも短いので、大きめの段差では揺さぶられるので、通常のカレラと同じようにはいかないので、そこはお忘れなく。

GT3のエンジンと足回り

エンジンは相変わらず、よく回る。回転でパワーを稼ぐ典型のようなエンジンで、回転とパワーの出方がキレイに比例するのは本当に気持ちがいい。最近、ターボ車の992や718に乗っていたので、余計に気持ちよく感じる。

435ps、43.5kg・mのパワーなので低中速では992の方が速いように感じるが、高回転時の加速感は数値以上に素晴らしい。

紛れもなく『GT3』である。

ポルシェ911 GT3(997)のメーターパネル

オートブリッピングのようなお助け装置は無いので、自分でエンジンを煽って、回転合わせをするも、軽量フライホイールのため、エンジンのレスポンスが良すぎて回りすぎ、なかなか回転が合わない。

何度か修正しながら試行錯誤し、やっと、このエンジンのレスポンスに身体が馴染んできた。

ハンドリングにこそ、このGT3の良さがある

さて、ここまでのエンジンやパワー感に関して言うと、他の991や992のGT3とパワーこそ違いはあるものの、よく似た印象で、同じベクトルだと思う。

しかし、大きく違うのはハンドリングだ。

このGT3、運転は正直「難しい」。

ポルシェ911 GT3(997)

いや、正確に言うと、991や992が簡単すぎるのだろう。むしろ、これが本来のGT3のシャシー設定なのだと思う。

まず、普通に991や992のGT3をドライブするような感じで、カーブに入り、単にステアリングを切る。すると、「あれ?GT3ってこんな感じだっけ?」と思う。

次のカーブで同じように普通にステアリングを切ってみる。
すると、ごく僅かに車体の動き、車体のヨーの出方が変わる。

さらに次のカーブで試してみても、なかなか同じような挙動にならない。

次にドライビングポジションをしっかりと取り、左足でフットレストを強く踏んで踏ん張り、肩をシートバックにしっかりと付け、肩を支点にステアリングを押すように曲げる。

つまり、教科書通りに運転し、カーブでフロントに荷重をかけつつステアリングを操作すると、今までの眠っていたGT3が「待ってました!」と言わんばかりに、機敏に動き出すのだ。

そうそう、GT3ってこうだよな」と思う動きがやっと出てくる。

このことが分かれば、このGT3は素晴らしく楽しい。

ポルシェ911 GT3(997)のリア

997のGT3は自分の運転のスキルが如実に、クルマの挙動に表れる。

991や992のGT3でも、サーキットレベルの速度域ならそうだが、一般道のワインディングを流すような速度域では、ステアリングさえ切れば、誰でもカミソリのように曲がる体験ができる。

そこが大きく違う点だ。

ポルシェ911 GT3(997)の内装

運転が上手ければ上手いほど、997のGT3はそれに応えてくれる。

ミスをして荷重のかけ方やステアリング操作が遅れると、それが如実に車の挙動として表れる。つまり、同じように運転することが難しく、再現性が低い。

だから、ドライバーは、常に気持ちよく滑らかに走りたくなり、GT3を乗りこなそうと自然と試行錯誤するようになるのだ。
その『試行錯誤』にこそ、このGT3の運転の面白さがあるように感じた。

上級者であればあるほど分かる楽しさ

以前、ポルシェのカレラカップに出場されているレーサーの方が、こう言われていた。「992のカップカーはめちゃくちゃ速いです。でも、991のカップカーはもっと面白かった。そしてさらに997はもっと面白かった」と。

今回の試乗で、この意味が少し分かったような気がした。

ドライバーの操作(入力)によって、クルマの挙動(アウトプット)に如実に変化がでる。
ここにアナログな操る楽しさがあり、それを乗りこなすことを「楽しい」と感じるのだと思う。

ポルシェ911 GT3(997)のリアテールランプ

もし997のGT3を買おうとするなら、少なくとも基本的なスポーツドライビングレッスンは受けてからの方が良い。

初心者が格好や見栄のためだけに乗るには、あまりにもったいない。

そう思えるポルシェが997型のGT3だと思う。

Hiro

Minaの夫です。 ファッションやステータスシンボルのためにクルマは乗りません。運転して楽しく、工業製品として優れ、作り手の意思が感じられるようなクルマを好...

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  • コメント ( 4 )

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  1. ごんた

    hiroさん、素敵な記事をありがとうございました!
    写真もかっこよく撮っていただき、嬉しいです。仰るとおり、クラッチとフライホイールが替わっていて純正の状態はわかりませんがクラッチは相当重いと聞いています。自分の腕が車に見合うように来月に鈴鹿で練習する予定です。ドライビングスクールも行ってみたいと思いつつ…
    またよろしくお願いします!

    • MinaHiro

      ごんたさん
      こちらこそ有難うございました!
      大切な愛車にのらせて頂き、感謝申し上げます。

      ぜひ、ドライビングスクールも行かれてみてください^^
      引き続きどうぞよろしくお願いいたします!

  2. やす

    はじめまして。

    同じ型(997.2)のGT3に乗っている者です。

    確かに純正クラッチは重いです。今まで乗った車の中でいちばんです。
    できるだけ渋滞は避けるようにしています。
    でも普段使いできないほどではありません。

    たまに芦有方面にも行ってます。
    機会がありましたら試してみてください。

    • MinaMina

      やすさん

      おぉーそうなのですね!!!
      997GT3は、玄人さんのための車だと夫が言っておりましたが、
      その車を乗りこなす喜びといったら、たまらないんだろうなぁと想像しております!

      またぜひ機会がありましたら、乗らせて頂けると嬉しいです^^
      有難うございます!