最後の空冷ポルシェ911(993型)、海外オークションで1億円超えの落札価格に

Porsche 911 Turbo(993)
ポルシェニュース

空冷911最後の1台、その特別な意味

1998年製のポルシェ911は、ポルシェ乗りにとって特別な意味を持つクルマだ。それは、この年が空冷エンジンを搭載した最後の911となったからだ。特に1995年から1998年にかけて生産された993型は、空冷911の集大成とも言える存在で、近年ではポルシェコレクターから高い人気を集めている。

そんな中、先日ボンハムスのオークションに出品された1台の993型911ターボSが注目を集めた。この個体は空冷911の最終生産モデルの1台であり、さらに「工場を最後に出た空冷911」と主張されているクルマだという。9月7日に行われたオークションでは、手数料込みで614,200ポンド(約1億1350万円)で落札されたそうだ。

特別仕様の数々

この993ターボS(シャーシナンバー:WP0ZZZ99ZWS370750)は、ポルシェの特別注文部門「ゾンダーヴンシュ」で製作されたクルマだという。993ターボSには2種類の工場出荷時パフォーマンスアップグレードがあったそうだが、このクルマは、より高性能な「WLS 2」パッケージを採用しているとのこと。

WLS 2パッケージでは、ターボチャージャーがより大型のKKK K24ユニットに換装され、最高出力は444馬力まで引き上げられたという。これに加えて、ツインパイプマフラーや追加のオイルクーラー、92リッターの大容量燃料タンクなど、数々の特別装備が施されている。

Porsche 911 Turbo(993)

Photo by Bonhams

内装も徹底的にカスタマイズされており、ボディカラーに合わせてオーシャンブルーで統一されているという。計器盤のベゼルに至るまで、すべてがブルーで仕上げられているとのことだ。

Porsche 911 Turbo(993)

Photo by Bonhams

独特な個性を放つ1台

このクルマを特別注文したのは、ドイツの作家クラウス・ファンダーボルグ氏だそうだ。彼はカーフォンやリアワイパーを削除するなど、独自の好みを反映させたという。また、ダッシュボードには「In memoriam Prof Ferry Porsche(フェリー・ポルシェ教授を偲んで)」と刻まれた金属プレートが取り付けられ、さらに1944年の人気映画からの引用文も添えられているそうだ。

Porsche 911 Turbo(993)

Photo by Bonhams

サイドシルには「The Last Waltz(最後のワルツ)」という文字が刻まれ、リアウィンドウにも同じ言葉のステッカーが貼られているとのこと。これらの装飾からは、オーナーの個性的な性格が垣間見えるようだ。

それでも予想を下回る落札価格、その背景

今回の落札価格614,200ポンド超えは、通常の993ターボSの評価額を大きく上回るものだが、オークションハウスの予想価格700,000〜800,000ポンド(約1億3000万〜1億5000万円)はだったようで、それには届かなかったという。

海外のメディアによると、昨年までは特別な来歴や豊富なオプションを持つ「1点もの」的な存在のクルマは、コレクター市場の下降傾向の影響を受けにくいとされていたそうだ。しかし、この993ターボSの落札結果を見ると、最高級の個体でさえも、より広範な市場動向から完全に逃れることはできないようだ。

また、オークションの開催場所や文脈も重要な要素だという。今回のオークションは、1940年代から1960年代のクルマで有名なグッドウッド・リバイバルのイベントに合わせて開催された。もし、同年代の他のポルシェと並んで出品されていれば、結果は変わっていたかもしれないとのことだ。

とはいえ、11,000km程度という低走行距離や、空冷911の中でも最も人気の高い90年代モデルという点を考慮すると、日本円で1億円超えという落札価格は決して低いものではない。

Porsche 911 Turbo(993)

Photo by Bonhams

日本でも最近は空冷ポルシェの価格がうなぎ登りで、いくら高くてもどんどん海外に流出してしまうため、なかなか良い個体を探すのが難しくなってきている。
今回の流れを見ると、まだまだ空冷ポルシェの資産価値は根強く、これからも長期的には高騰しそうに思う。

Hiro

Minaの夫です。 ファッションやステータスシンボルのためにクルマは乗りません。運転して楽しく、工業製品として優れ、作り手の意思が感じられるようなクルマを好...

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