ボクスターは至福のポルシェ – 自分にとって楽しいポルシェとは?

981ボクスターGTS
レビュー・試乗記

ボクスターでのツーリング – 新たな発見

先日、久しぶりに981型ボクスターGTSでツーリングに出かけた。
様々なポルシェに乗る機会がある中で、改めてボクスターでのツーリングの魅力を再認識し、このツーリングの中で、「楽しいポルシェとは何か」という問いについて深く考えさせられたので、そのことを記事にしてみようと思う。

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ワインディングを中心とした長距離ツーリングにおいて、ボクスターの魅力が際立つ。911やケイマンなど他のモデルと比較しても、「これでなければ」と感じる瞬間が数多くあったのだ。今回、その理由を掘り下げてみようと思う。

NAエンジンが奏でる音楽

981ボクスターの魅力の第一は、自然吸気(NA)エンジンが奏でる快音だ。

アクセルワークに比例するようなトルク感が、ドライバーの意思をダイレクトにクルマに伝える。718ケイマンや992型911のようなターボエンジンとは異なり、アクセルをわずかに踏むだけで急激に加速するのではなく、アクセルの開度に応じて速度が伸びていく感覚が心地よい。

981ボクスターGTS

2速、3速のギアを固定したまま走行しても、加速が鋭すぎたり、速度が出すぎることはない。エンジンは歌うような美しいエキゾーストノートを奏で、粒の揃った快音を聞かせてくれる。山道を軽快に駆け上がるだけで、ドライバーを至福の世界へと誘う

オープンエアの醍醐味

ボクスターの大きな特徴である開閉式ルーフは、ドライビングの楽しさを倍増させる。屋根を開けることで、エンジン音の魅力がさらに引き立つ。車内に響き渡る重低音も素晴らしいが、オープンエアで聞く生のエンジン音と排気音は格別だ。

981ボクスターGTS

さらに、外気や匂い、光を直接感じながら走ることができる。これはクローズドボディのクルマでは決して味わえない、オープンカーならではの魅力だ。自然との一体感を味わいながらのドライビングは、ポルシェ乗りにとって最高の瞬間と言えるだろう。

バランスの取れた性能

最新のポルシェモデルと比較すると、981型ボクスターの反応はややマイルドで、ある種の「緩さ」も感じられる。しかし、この特性がシャシーのしなやかさを生み出し、ワインディングでの楽しさを引き出す。単にハンドル操作に忠実に反応するだけでなく、アクセルワークでクルマの挙動をコントロールできる点が魅力だ。

一般道の速度域でも、クルマとの対話を楽しめるのが、この時代までのポルシェの特徴と言えるだろう。最新モデルの正確無比な挙動も魅力的だが、ドライバーの技量を引き出し、クルマとの一体感を味わえる981型ボクスターの魅力は格別だ。

981ボクスターGTS

今回のツーリングでは、御嶽山周辺のワインディングを走破した。
981型ボクスターは適度な車高と優れた乗り心地を備えており、うねった道や多少の段差があっても気にせず走行できる。これは、GT3など車高の低いモデルでは難しい点だ。

過去にGT3でツーリングした際、エンジン音を楽しむために速度を上げると、路面の起伏や段差に神経を使わざるを得なかった。ブレーキングで車高が下がり、フロントスポイラーを擦りそうになることもあった。そのため、走行ルートを慎重に選んだり、常に路面状況に気を配る必要があった。

対して981型ボクスターのようなレギュラーモデルは、どのような道でも気兼ねなく走れる。これにより、クルマとの対話に集中でき、純粋なドライビングプレジャーを味わえる。ポルシェオーナーにとって、これほど贅沢な時間はないだろう。

ボクスターに限らず、オープンカーで早朝のワインディングを駆け上がる体験は、ポルシェ乗りなら一度は味わうべき至福の時間だ。自然の中を駆け抜ける爽快感と、クルマとの一体感が織りなす瞬間は、言葉では表現しきれない魅力がある。

私が考える理想のポルシェとは、一般道や日常的な走行シーンでいかに楽しめるかという点に尽きる。大半の走行が一般道で行われることを考えると、低速でも高速でも楽しめるクルマこそが、真の意味で優れたスポーツカーと言えるだろう。981型ボクスターは、まさにこの条件を満たすモデルの一つだ。

ポルシェ乗りの方々にとって、クルマ選びの基準は人それぞれだろう。
コレクション目的も有りだと思うし、所有欲や顕示欲のために買うのも有りだ。サーキット走行用に買うのも素晴らしい。
しかし、日常的に楽しめること、そして様々な走行シーンで魅力を発揮できることは、私にとって長く付き合えるクルマの重要な要素だ。981型ボクスターは、まさにその両方を兼ね備えたモデルと言える。

981ボクスターGTS

最後に、ポルシェ乗りの皆さんに伝えたい。どのモデルであれ、一度、ボクスターで屋根を開けて早朝のワインディングを駆け抜ける経験をぜひ味わってほしい。
その瞬間、ポルシェを選んだ理由が、さらに身体全体で理解できるはずだ。それこそが、ポルシェの真髄であり、私たちがこのブランドを愛する理由なのだから。

Hiro

Minaの夫です。 ファッションやステータスシンボルのためにクルマは乗りません。運転して楽しく、工業製品として優れ、作り手の意思が感じられるようなクルマを好...

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  • コメント ( 6 )

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  1. 981GTS

    2015年式Caymanを乗っていますが、981も最終モデルでも間もなく10年を迎えます。
    使い方によっても違いますが、定期メンテナンスのほか、足回り等のリフレッシュについて記事にしてもらえればと思います。

    0
    • HiroHiro

      981GTSさん、こんにちは。
      確かにもうすぐ10年ですよね。
      またリフレッシュについての記事も書きたいと思います。
      今後ともよろしくお願いいたします。

  2. コート・カバーン

    Hiroさん、お久しぶりです。

    まさに今回の記事、我が意を得たり!と共感してます。
    先月、台風一過の九州を愛車の981ボクスターで走ってきましたよ。もう最高でした☆彡
    新潟~神戸港~宮崎港~大隅半島~桜島~指宿スカイライン~高千穂~阿蘇外輪山~やまなみハイウェイ~竹田~雲仙~呼子~門司港~大阪南港~新潟・・・3500kmを10日間で。行く先々で地元のライダーの方々とお話しさせていただき、「新潟からクルマで(*_*)?」と一様に驚かれました。
    多少は疲れましたが、ボクスターを運転する楽しさのほうが遥かに上回り、大満足のツーリングとなりました。
    オープンはホントに気持ちいいですよねぇ。人生を豊かにしてくれます。
    帰ってきたばかりなのに、wata師匠の最新北海道GTを読んで、昨夏回れなかった道北に行きたい衝動に駆られる今日この頃です。

    • HiroHiro

      コート・カバーンさん、こんにちは

      こちらこそ、ご無沙汰しております。
      記事に同感頂けて嬉しいです!
      九州も良いですね〜、コメント見てるだけで行きたくなりますね笑
      wata師匠の北海道GTの記事はいつも読む度に行こう、行こうと思ってるのですが、なかなか都合つかず。。
      いつかボクスターで行ってみたいです。

  3. Yuki

    いつもブログを楽しく拝見しております。
    初期型の987に乗っておりますが、オープンの良さやどの速度域でも楽しめることにとても共感しました。
    現在乗っているボクスターは今の私にとってはすべてにおいて「丁度よく」気兼ねなく乗れる、そんなモデルだと考えています。

    987もクラシックになってきましたが、ちゃんとメンテナンスしてあげると、
    乾いた良い音を聞きながら楽しめる素晴らしい車です。
    (パートナーにはうるさいと不評ですが…w)

    もし987にお乗りになる機会がありましたら、Hiro様の感想をお聞かせください。

    • HiroHiro

      Yukiさん、こんにちは。
      いつもブログを読んでくださり、ありがとうございます。
      986はあるのですが、あいにく987のボクスターはまだ無いですね〜
      たぶん、かなり楽しいボクスターでしょうね。
      機会あれば、987のレビューもしてみたいと思いますので、また楽しみにしておいてください。