ポルシェ911 SC(空冷930型)に試乗|911はいつの時代も911だ
公開日:2020.10.13
先日、夫がお知り合いの方の911SCを運転させてもらったということで、その感想を記事に書いてくれた。よろしければぜひご覧ください。
911SC(930型)、試乗
今回、試乗させていただく機会に恵まれたのは1981年式のポルシェ 911 SCだ。911 SCのSCとはSuper Carreraのことらしく、3リッターの空冷フラット6を積む。出力は204PS/5900rpm、27mkg/4300rpmを誇り、それまでの911 2.7およびカレラ3.0に代わるモデルであり、カレラより少しワイドなボディを持つのが特徴だ。
手元の資料を紐解いてみると、78年式のSC(180PS )で0-100km/hが6.3秒、最高速が226.6km/hというから、この81年モデルだと、おそらく6秒程度だろう。これはかなり速い。
現代の基準で考えても、6秒台は普通のファミリーカーでは到底出せない。それなりのスポーツモデルでないと達成できない速さだ。
トランスミッションはいわゆるポルシェシンクロの915型。「バターを熱いナイフで切る」ような感触などど比喩され、今でも熱狂的なファンの多いトランスミッションだ。
文字通り、グニュっとした感覚のシフトを1速に放り込み、クラッチを繋ぐ。このクラッチの繋がる感覚というのは、新旧いろんなポルシェに乗るが、どれもよく似ている。ほぼアイドリングで軽くクラッチを繋ぎ、動き出すと同時にアクセルを踏み込む。古いクルマだからといって、それほど難しいわけでもなく、ポルシェのクラッチに慣れた人ならスムーズに発進しやすいと思う。
走り出し、最初の転がり間はとても柔らかい。スポーツカーとは思えないくらい柔らかい。2速、3速とギアを放り込み、加速していく。パワー感は申し分ない。昔のクルマだから遅い、というような印象は全くなく、普通によく走るクルマといった感じだ。アクセルの踏み込み量に比例して、思った通りに車速が変わるところはポルシェらしい。
ステアリングは重いが、走り出してしまえば特に個人的には違和感は無い。このくらいの方が911らしいし、スポーツカーを運転しているという感覚を強く感じることができる。
芦有の宝殿S字で右へ左へとステアリングを切ると、思ったよりロールは許す。ちょうど、このクルマのトランスミッションのグニュっとした中にも芯があるような感覚と、足回りの感覚はよく似ており、柔らかい中にも一定のところで止まるような感覚があり、決して不安や怖さを感じるようなものではないのだ。
自分の持つ964型と比べると、やはり軽快感、軽さはこちらの方が感じ、964の方がもう少し重い感じはする。一方で、当初、想像していたよりそんなに差はないと思った点は、RRであることの操縦性だ。世代が違うので、964よりももっと難しいものかと思っていたが、911SCは普通に流してワインディングを走る分には、特別神経質な面は見せなかった。
これは、ある程度私が911に慣れているから、というのもあるかもしれないが、そんなにフロント荷重を意識しなくても、曲がってくれるし、危なっかしいところは無かった。当然、もっと高い速度域なら話は別だと思うので、あくまで一般道を気持ちよく流す程度の話として捉えて頂きたい。
エンジン音は、やはりこの時代の生音のエンジン音はとても気持ちが良い。メカニカルな可動部の音がすべて聞こえ、何重奏にもなったエンジン音だ。この日は納車されたばかりの992を運転して行っていたのだが、992のエンジン音は空冷のエンジン音に似ている。
そこであらためて聴き比べると、992はこの空冷のエンジン音の雑味部分だけを取りの除いたような感じだな、と改めて思った。
4速から5速へとシフトを放り込むが、エンジン回転がかなり高いのだ。今となってはうろ覚えだが、おそらく100km/hも出せば4000rpm手前になるくらいのギア比だ。
最初、私が5速に入れられてないのかと思い、何度も確認したのだが、やはり5速だった。後でオーナーさんに確認すると、「そんな感じですよ」との返答。なので、高速道路を走ると、結構機敏に走れると仰っていた。確かにこんなに高い回転が維持できるなら、さぞかし楽しいだろうと思う。
アクセルを緩め、軽くブレーキングを残していかにフロントタイヤの接地を増やすかを意識して曲がってみると、やはり911の動きだ。気持ちよく、クルっとリアを中心に曲がるような感覚。本当にどの時代のものに乗っても基本は一貫しているのが911の凄いところ。
今の991や992は簡単過ぎるとの批判もあるが、一方で、RRに適した走り方をちゃんとすれば、それに応えてくれる。その応えてくれる懐の深さは、最新だろうが、空冷だろうが変わらないのだ。
ファミリーカーとしても使える911
クルマのことがそれなりに理解できたところで、3速、4速あたりにギアを固定し、定速で流してみるととても気持ちが良い。このまま四国の海沿いの55号線あたりを走れば最高じゃないかと思う。911SCはそんな走り方がよく似合うのではないかと思う。
ちなみに、オーナーさんに聞くと、なんとこのクルマはファミリーカーとして使われているそうで、奥様やお子様を乗せて普段使いをされているとのことで、「全然使えますよ」とのこと。信頼性も高く、どこでも行けますと仰っていた。まさに素晴らしい911の使い方だ。
ポルシェ曰く
『ニュルブルクリンクでレースを終えた後、ショッピングへ向かえるスポーツカーは他にはありません。たとえ乗組人数がそれぞれ異なっていても、ポルシェが創るのはただ1つ。日常を愉しむためのスポーツカーです。』
とあるが、
まさに万能スポーツカーとして911を使われているオーナーさんには拍手を贈りたい。オーナーさん、貴重なクルマを体験させていただき、ありがとうございました!
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