ポルシェ空冷911(964C2)のティプトロニックって正直どうよ?
公開日:2018.12.10
MTか、ティプトロか
夫は911(964C2)を購入するとき「MTにするか、ティプトロニックにするか」で迷っていたが、結局ティプトロニックを選んだ。
最初はMTを検討していたが、MTで程度の良いものは少なく、あっても価格がとんでもなく高いか、何らかの改造がされているものばかりだったそう。夫は完全オリジナルコンディションにこだわりたかったので、ティプトロニックであれば、上質でほぼ完全な整備記録や出自が分かるものがいくつかあり、値段も許せる範囲だったそう。
また、世の中の多くの空冷記事やブログはMT車のものが大半を占めるから「あえてティプトロニックを買って情報発信出来たら面白い」と思ったのと、ポルシェのMTについてはボクスターGTSで味わえるので、今回はティプトロニックを選んだようだ。
というわけで、先日夫が、今の時点でのティプトロニックの感想をレポートとしてまとめてくれたので、今日はそれを紹介したいと思う。
以下、夫の感想
964や993を購入検討している人の最も気になる点は「MTにするか、ティプトロニックにするか」だと思う。私も大いに迷ったが、今回の964はティプトロニックにした。
手元の資料によると、このクルマのティプトロニックは、ギヤボックス担当のZF社、電子回路担当のボッシュ社、そしてポルシェの3社の共同開発で作られており、「5つのモードを持ち、アクセル開度などから自動的にモードを切り替えて制御してくれる」ものらしい。また横Gなどの情報も考慮し、カーブなどでの不必要なシフトアップを防ぐような仕組みもあるようだ。
①変速ショック
街中などでDレンジで普通に乗ってみると、極めて変速ショックは少ない。Dレンジだと2速発進のATだが、全くショックらしいショックは無く、これが30年近く前のATだとは思えないほど。私が知る当時のクルマのATといえば(国産車しか知らないが)、盛大な変速ショックで変速のたびに前後に揺れるイメージだったが、ティプトロニックは極めて優秀だ。
ちなみに、あえて1速スタートで発進し、2速に上がる直前に意地悪にアクセルを緩めたりすれば多少のショックは感じるが、そうでなければスムーズにつながる。
またショックと言ってもそれほど不快なものではなく「MTで人間が上手くやってもこのくらいはショックはあるかな」と思う程度である。さらに注意して乗ると、ロックアップが繋がった時にエンジンの回転が少し落ち、外れる時に「コクン」という小さな振動が出る時もあるが、これはアクセルの開閉とロックアップ制御のタイミングが悪い時くらいのもので、あえて意識しなければ分からない。
このクルマの整備記録を見ると、過去に2回ほどATフルード交換しており、整備状態が比較的良いというのも起因しているかもしれないが、それを差し置いても良いATだと思う。
②マニュアルシフト
シフトレバーを右に倒し、マニュアルシフトをしてみる。Dモードよりもロックアップされる回転域が少し下がり、かつ、よりダイレクトに繋がる感じがする。少し元気よく2速で加速すると1800-2000回転あたりで、Dレンジよりダイレクトにロックアップが繋がるので、一瞬エンジン回転が下がり、ギアが変わったような感覚がある。シフトに手をやり、+方向(前方)へ倒すと3速に入る。シフトシフトスピードは早いとまでは言えないかもしれないが、かといって遅いわけでもない。
確かに現代のATやPDKの早さには敵わないものの、昔のATにありがちな2テンポくらい遅れて変速するといったようなことは決してない。
具体的には、一般道を常識的な速度で3速で走行中、コーナーが迫ってきたので、コーナー手前でブレーキを踏み、マニュアル操作で2速に落とすと言った場面。変速の遅いATであれば、変速が始まる頃にはカーブに既に入ってしまってたりすることもあるが、ティプトロニックではそんなことはない。
もし正確に時間を測ることが出来れば、「一般の人がMTで操作して変速するのとほぼ同じ」か、もしくは「タイミングによってはティプトロニックの方が早い」と思う。
「ティプトロは変速が遅い」とか「MT一択」だとよく聞いていたが、乗ってみると、そこまで言う程ではないというのが印象だ。これなら、下手なMT操作の方が変速ショックもあるし、遅い場合もあると思う。
③加速感・速さ
次に加速感、速さという視点ではどうか?カタログ値によると「MT車の0~100km/hは5.7秒」に対し、「ティプトロニックは6.6秒」と約1秒ほど遅い。しかし、現実的によく使う100~120km/hの中間加速などでは逆転する。当時のCG誌のテストデータによると、「MTが3速(この速度域で最速ギア)で2.2秒かかるのに対し、ティプトロニックは1.9秒」なのだ。
実際に街中での加速や高速での加速において、歯痒さなどは感じない。これはATのロックアップが1100rpm~1200rpm辺りから働き2000rpm前後で直結するので、運転中はほぼ直結状態を維持してくれるためだ。おかげで昔のトルコンATによくあるスリップ感や空走感は、ほぼ感じず思った通りの加速を得ることができる。
MTか、ティプトロニックか?
では、最終的に「MTとティプトロニック、どちらが楽しいか?」と聞かれれば、その答えは明白で、正直MTだと思う。ボクスターのMTに普段乗っているので、ハッキリとそう思う。
ティプトロの場合、2速で約130km/hまでカバーし、3速では約195km/hまでカバーする。エンジンの伸びやかな加速を楽しむには良いが、MTの2速は約110km/h、3速は約160km/hなので、日本の道路環境ではMTの方がよりエンジンを回せる。ギア比だけで見ても、MTは『楽しい』と感じることも多いだろう。
ただし、これはあくまで比較論での話。決して、ティプトロニックが楽しくないというわけではない。Dレンジで流しても、マニュアル操作をしながら山道を走ったり、空いた道を走るのはこれはこれで痛快だ。それに素早く高速で追い抜きしたい場合などでは、何も考えずにアクセルを踏み込めばいいし、自分でシフトダウンしても良い。
特に個人的には3速ホールドで空いた田舎のカントリーロードを流すのは非常に気持ちが良い。ギア比的にもアクセル開度とエンジンの回転の伸びが丁度良いくらいに正比例して、右足とエンジンの直結感が快感だ。エンジンは回り過ぎず、回らなすぎず、ひたすら緩やかなカーブと真っ直ぐな長いストレートを空冷サウンドをBGMに走ると、どこまでも走りたくなる。
もしティプトロニックかMTかで迷われている方がいらっしゃれば、
サーキットや峠をガンガン攻めたい人ならMTを勧めるし、そうでなく日常使いやロングツーリングなどがメインであれば、ティプトロニックでも全然問題ないと思う。
また、ティプトロニック車はタマ数もやや多く安価だし、比較的程度の良い個体が多いのも魅力な点だ。
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以上、夫の空冷911(964C2)のティプトロニックに関するレポートでした。
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コメント ( 2 )
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なんだかティプトロがすごく良く見えてくるのがすごいブログです。
> 2速に上がる直前に意地悪にアクセルを緩めたりすれば多少のショックは感じるが、そうでなければスムーズにつながる。
というのが新鮮です。AT車(ブルーバードATTESA)に乗っていたのはもう20年近く前ですが,上記の逆でアクセル踏みっぱなしではそれなりにシフトショックがあり,微妙にアクセルを抜いてシフトアップさせてやるとスムーズだった記憶があります。シフトアップは右足で,シフトダウンはレバーでやっていました。
ひとつ質問ですが,ティプトロニックのセレクターD,3,2,1はどこにロックがあるのでしょうか。マニュアルモードがあるから不要なのかもしれませんが,Dから3や2へのシフトダウン時にロックボタンを押す必要があるのかどうかが昔の感覚では気になったもので。
PorscheDreamerさん
>なんだかティプトロがすごく良く見えてくるのがすごいブログです。
有難うございます 笑
>AT車(ブルーバードATTESA)に乗っていたのはもう20年近く前ですが,上記の逆でアクセル踏みっぱなしではそれなりにシフトショックがあり,微妙にアクセルを抜いてシフトアップさせてやるとスムーズだった記憶があります。>シフトアップは右足で,シフトダウンはレバーでやっていました。
夫にきいてみると、「そうそう!」と言っておりました。昔のATは、シフトアップのタイミングでアクセルを抜いてあげたほうがスムーズだったんですね。
そう考えると、今のATはとても賢くなったのですね。
>ひとつ質問ですが,ティプトロニックのセレクターD,3,2,1はどこにロックがあるのでしょうか。マニュアルモードがあるから不要なのかもしれませんが,Dから3や2へのシフトダウン時にロックボタンを押す必要があるのかどう>かが昔の感覚では気になったもので。
ティプトロのロックは、シフトレバーの上部にあります。シフトダウン時にはロックボタンを押しますが、マニュアルモードの場合は、横に倒してロックボタンは押さずに操作する感じです。