718ケイマンのベースグレード(20インチ、PASM、スポクロ、スポエグ)に試乗。オプションの有無で走りは変わるのか?
公開日:2021.09.16
先日、妻がレビュー記事を書いていた718ケイマンの素モデル(ベースグレード)について、今回は私の視点でレポートしてみたい。
コンテンツ
オプション満載の718ケイマン
以前にも718ケイマンのベースグレードは、2台ほど試乗記を書いているが、いずれもオプションは最低限のものだった。
しかし、今回の個体は20インチホイールに加え、三種の神器であるスポーツクロノパッケージ、PASM、スポーツエグゾーストが揃っているという、とても希少な個体になる。
ベースグレードのケイマンは、なかなかオプションが揃った個体が少なく、特に走り系のオプションが揃った個体は極端に少ない。
スポーツクロノパッケージ付きかと思えば、よく見るとPASMが無かったり、スポーツエグゾーストはあるけど、スポーツクロノパッケージは無かったり、というような個体が圧倒的に多いのだ。
エクステリア
まずは外観から見てみよう。ジェットブラック・メタリックのボディはとても美しく、光の加減によっては少し青みがかかって見えたりして、とても美しい。またメタリック塗装のブラックなので、ソリッドのブラックより磨き傷が目立ちにくいというのもメリットだ。
インテリア
内装はシンプルにブラックの標準のスポーツシートに、標準のダッシュボードであり、外装と走りに特にお金をかけた個体であることがよく分かる。
エンジン特性
さて、エンジンをかけて走り出すと、PDKなので巷でよく言われるMT版のトルク不足のようなものは、あまり感じないが、極低回転での3速、4速から勢いよく加速したい時などは、ほんの少しもたつく場面もある。
シフトダウンとエンジンの回転が上がり過給が高まるまでに、少しのタイムラグがあるのだ。
ただ、過去に何度か言っているのだが、718ケイマンのベースモデルは、そもそもスポーツモードにして、街中などは走ったほうが断然気持ちいい。ノーマルモードは、かなりエコな制御なので、このエンジンの特性にはあまり合わないと思う。
スポーツモードであれば、やや高めの回転を維持し、常にある程度の過給が高まった状態なので、いつでも踏めば、瞬時にエンジンは応えてくれる。なので、街中でキビキビとミズスマシのように動くことができるのだ。
20インチホイールとPASM
しかし、PASMはとても乗り心地が良い。20インチのオプションホイールを履いているにもかかわらずだ。
ここで、最近、いろんなポルシェに乗って感じることがある。それはポルシェの場合、大径のオプションホイールの方が乗り心地がよく感じるケースが多いということだ。
もちろん、全てのケースではないと思うが、その確率は高い。
今回のケースもPASMの有無以前に、過去に乗った18インチのモデルより、今回の20インチの方が圧倒的に乗り心地がよく感じるのだ。もしかしたら、ポルシェはその車種のオプションホイールを履くことを前提に、サスペンションのチューニングをしているのではないかと思う。
重い大径ホイールでのベストバランスで作られているため、軽量なホイールだと、低速で少しハネ気味な乗り味になってしまうのだ。
特にケイマンの18インチと20インチでは、2インチも違うのに20インチの方が乗り心地がよく、その差が顕著に感じる。もちろんPASMがついているので、その分を差し引かないといけないが、それでもお釣りがくる良さだと思う。
PASM自体の話題に話を戻すと、やはり低速域での大入力における、ユサユサと揺れ残るような感じが圧倒的に少ない。高速域になってしまえば、あまりPASM無しとの差はなくなるが、タウンスピードでの乗り心地を求める方なら絶対に付けたほうがいいだろう。
少なくともPASM+20インチの組み合わせは最高だと思う。
スポーツクロノパッケージ
スポーツクロノパッケージ付きの個体なので、ハンドルの手元でスポーツやスポーツプラスモードへの変更が可能で、さらに20秒間は最大ブーストを体験できるスポーツレスポンスボタンも付いてくる。また、あまり語られることがないのだが、スポーツクロノパッケージだと、エンジンマウントが通常のものではなく、PADM(ポルシェアクティブドライブトレインマウント)という電子制御のエンジンマウントになるのだ。
なお、余談ではあるがPADMは981などでは故障の多い箇所として忌み嫌われることもあり、部品が高価なことから、故障した際に通常のエンジンマウントに載せ替えている個体もあると聞くので、中古車購入時には注意したいところだ。
このPADM、効果はてきめんでスポーツクロノパッケージがついていない個体のスポーツモードだと、ギアが落ちて、アクセルレスポンスが鋭くなるだけだが、スポーツクロノパッケージ付きの個体であれば、それに加えてグッとシャシー全体が引き締まり、筋肉質になったような感触を得ることができる。
なので、PASMをスポーツモードにして足を固めていなくとも、コーナリング時の安定感や接地感が増し、体脂肪が少し落ちたような動きになるのだ。
今回の個体も、スポーツモードにするだけで十分な接地感と、安定感を得ることができ、とてもコーナリングが気持ちがいい。何度も718のコーナリングについては、過去記事で絶賛しているので、多くは語らないが、やはりリアの安定感からくるどっしりっしたフィーリングは981には無いものがある。
スポーツエグゾーストと排気音
エンジンは2018年モデルということでGPFも無く、決して「静か」ということはない。普通にスポーツカーらしい音量で楽しむことができるものだ。音質は重低音系で不等長エキゾーストからくるV8にも似たビート感も、好きな人にはたまらないだろう。
スポーツエグゾーストをONにすると、わずかに音量が上がったように思うが、先代ケイマンのような大きな差ではない。
アクセルオフ時のバブリング音は控えめで軽く「ボボッ!」と吠える感じである。
718ケイマンのベースグレードの魅力
ターボエンジンだけあり、981のGTSより体感上の加速感は速い。特に2速、3速固定での加速時など、低回転からの厚いトルクでどんどん加速させていく様子はとても新鮮だ。回転数を中回転以上に留め、アクセルを踏み足していくと、気持ちのいいフラット4のサウンドとともに、どんどん車速は乗っていく。
ただ、踏み切れないほどのパワーではないところが、この718のベースグレードの最大の魅力である。
中高回転まで回してしまうと、ターボラグなど皆無の世界が待っており、低回転ではビート感が強かった排気音もちょうどよく粒が揃ってくる。ターボなのでトルクもパワーも十分。かといって、顔が引きつるほどのパワーではないので、アクセルをしっかりと踏み抜いていける。
しっかりしたシャシーと、エンジンのパワー感、そして排気音の調律があってくる瞬間だ。
ここの領域が718ケイマンのベースの魅力だと個人的には思う。
特にサーキットなら、常にこの調律のあった状態をキープして走れると思ったので、私はかねがね、サーキット用に718ケイマンの素が欲しいと言っていたのだ。
街中をノーマルモードで走るなら、排気量の多いSの方がいいかもしれない。圧倒的な加速感や、パワー、高回転での伸びを求めるならGTS系の方が良いだろう。また、サーキットでも速く走るというのが目的ならGT4だと思う。
ただ、私のようにサーキットを単に楽しんで走りたい、という目的にはベースグレードは丁度いいと思ったのだ。
718ケイマンのベースグレードは価格も比較的手の届きやすい方だし、あまり大きなトラブルも聞かない。また中古車市場だと走り系のオプションはあまり評価されていないので、たまにオプションてんこ盛りの個体が買えるということもある。
もし718ケイマンを私が買うならポルシェの三種の神器(スポーツクロノパッケージ、PASM、スポーツエグゾースト)が付いているものを選ぶだろう。最低でもスポーツクロノパッケージとPASMは必須だ。
ポルシェのオプションは嘘をつかない。今回はあらためてそれを強く感じた試乗だった。
このブログが気に入ったらフォローしてね!
コメント ( 2 )
トラックバックは利用できません。
718についての記事をお待ちしていました!当方、718ボクスターSを所有しておりましたので、大変参考になりました。
自動車評論家やネット上の評価では、4気筒ターボエンジンと、低いビート音の評価ばかりが強調され、マイナス評価されがちなので、残念に思っていました。実際、それが中古車価格に影響しているように感じます。
HIROさんのように丁寧でかつ、非常に深い内容で評価してくださるのは、とてもありがたいです。
実際に乗ってみると、シャシーの剛性感や乗り心地は先代よりもよく、ハンドリング性能も最高で、さらにS以上ではVTGがついていて、ターボラグもほとんど感じなかったです。
話は変わり、ポルシェのオプションが評価されにくいのは、新車で買う人にとってはデメリットでしかないですよね。
だからこそ、お買い得な中古車が見つかるわけですが…
記事の中にありました、981世代や991.1などのPADMを、安価なものに差し替えしているか見分ける方法を教えていただけたら助かりますm(__)m
よしきちさん
有難うございます!
>記事の中にありました、981世代や991.1などのPADMを、安価なものに差し替えしているか見分ける方法を教えていただけたら助かりますm(__)m
夫に聞いてみたところ、素人では分からないみたいなので、それはディーラーで見てもらうとかでしか分からなさそうだとのことです。。